事故に遭われたあと、痛みと同じくらい気になるのがお金のことだと思います。
治療費はどうなるのか。自分で払うのか。病院にも行っているけれど、接骨院にも通えるのか。
先にお答えします。交通事故の施術では、窓口でのお支払いがない形になることが多くあります。そして健康保険のときとは違い、病院と接骨院の両方に通うことができます。
ただ、負担がないという話だけで終わらせたくありません。この記事では、なぜそうなるのかという仕組みと、当院が実際にお願いしていること、そして施術がどれくらい続くのかという現実まで、深谷市の当院の記録を交えてお話しします。
■ 交通事故の施術は、窓口でのお支払いがない形になることが多くあります
交通事故のお怪我で接骨院に通われる場合、施術費は相手方の自賠責保険から支払われるのが基本です。
そのため、患者さんが窓口でお支払いをされる場面は、多くの場合ありません。
ただし、これは常にそうなるという意味ではありません。事故の状況や過失の割合、保険会社の対応によって扱いが変わることがあります。ご自身のケースがどうなるかは、保険会社の担当者にご確認いただくのが確実です。当院からも、必要な手続きについてはご案内します。
■ なぜ負担がないのか——健康保険ではなく自賠責保険を使うからです
仕組みの話をします。
普段のお怪我で接骨院に通われるとき、使うのは健康保険です。この場合、患者さんは決められた自己負担分をお支払いになります。
一方、交通事故の場合に使うのは自賠責保険です。これは自動車を運転する方が加入を義務づけられている保険で、事故で怪我をさせてしまった相手方の治療費などにあてられます。
つまり、支払いの出どころが違うのです。健康保険は患者さんご自身が加入している制度、自賠責保険は相手方が加入している制度です。この違いが、窓口での負担の有無に表れます。
■ 健康保険と違って、病院と接骨院の両方に通えます
ここが最も誤解されやすいところです。
普段のお怪我では、同じ症状について病院と接骨院の両方で健康保険を使うことはできません。制度上、保険医療機関で同じ負傷等の治療中の場合は対象外と明記されています。
ところが交通事故の場合は違います。整形外科に通いながら、接骨院にも通うことができます。
| 普段のお怪我(健康保険) | 交通事故(自賠責保険) | |
| 窓口での負担 | 自己負担分をお支払い | お支払いがない形になることが多い |
| 病院と接骨院の併用 | 同じ症状ではできない | できる |
| お薬が出ている期間 | 当院では施術をお受けしていません | 通っていただけます |
| 期間の考え方 | 当院は1ヶ月以内を目安にしています | 症状の経過にあわせて継続します |
むしろ当院は、医療機関にもかかっていただくことをお願いしています。理由は次の項でお話しします。
■ ただし「負担がないから通う」ではありません
正直にお伝えしておきたいことがあります。
窓口での負担がないからといって、それを通う理由にはしないでください。逆に、負担がないからと必要な施術をやめてしまうのも違います。
判断していただきたいのは、症状がどうなっているかです。
交通事故のお怪我は、普段の怪我とは性質が違います。強い外力が一度に加わっているため、体へのダメージが大きく、引いていくのに時間がかかりやすいというのが当院の実感です。
そして、事故直後は痛みを感じないことがあります。体が緊張していて、感じ取れていないのです。数日経ってから、あるいは数週間経ってから出てくることも珍しくありません。
■ 通い始める前に、やっておいていただきたいこと
手続きの順番として、当院からお願いしていることがあります。
一つ目。まず医療機関を受診してください。
事故のあとは、まず病院で診てもらってください。骨に異常がないか、画像でしか分からないことがあります。私たち柔道整復師は画像を撮ることも診断をすることもできません。ここは医療機関の役割です。
二つ目。保険会社に、接骨院にも通う旨をお伝えください。
自賠責保険を使う手続きは、保険会社を通して進みます。当院に通われることを事前にお伝えいただくと、その後がスムーズです。当院からも保険会社とのやり取りについてご案内します。
三つ目。痛む場所を、すべて伝えてください。
これが一番大事です。当院の交通事故の記録を振り返ると、1か所だけを痛めた方はほとんどいません。首だけのつもりが、背中も腰も痛んでいた、ということが普通に起きます。
最初に伝えていない箇所は、後から出てきたときに扱いが難しくなります。少しでも気になる場所は、遠慮なく全部お話しください。
■ 施術がどれくらい続くのか——半年に及んだ方の記録
期間の話をします。
信号待ちで停車していたところ、後ろから追突された40歳の女性の記録です。むち打ちに加えて、自律神経の不調が出ていました。冷や汗が出る、顔に汗をかく、首を動かすと不快感がある。初期はそういう状態でした。
この方の施術は、およそ半年続きました。
交通事故の施術について、一般に想定されている期間より長い方だと思います。当院としても、強い外力が加わったお怪我はそれだけ時間がかかるものだと考えています。
この経過の中で、当院が大切だと感じたことが一つあります。ご本人が、自分の痛みの状態を正確に伝え続けられたことです。そしてその内容を、医師にも理解してもらえたことです。
痛みは目に見えません。ご本人が言葉にしない限り、誰にも分かりません。
■ 4か所を痛めた方の記録——引いていく順番はばらばらです
もう一つの記録です。
深谷市にお住まいで、デスクワークをされている方です。信号待ち中に後ろから追突され、事故直後は吐き気とめまいで救急搬送されました。診断されたお怪我は4か所。首、背中、腰、そして胸のあたり、特に左の肋骨でした。
当院に来られたのは、事故からおよそ1ヶ月後です。
このとき特徴的だったのが、部位ごとに痛みの強さがまったく違ったことです。首と胸のあたりは比較的軽く、背中と腰が強く残っていました。
そして施術を続けていく中で、引いていく順番もばらばらでした。楽になった箇所がある一方、背中と腰は最後まで残りました。
デスクワークで一日中座っている以上、背中には負担がかかり続けます。呼吸のたびに胸が痛むこともありました。事故のあと無意識に肩へ力が入ってしまい、眠りが浅くなっていたことも影響していたと当院は見ています。
事故のあとに出るだるさや眠りの浅さについては、こちらでも詳しくお話ししています。
交通事故後の首の痛みが治まっても続くだるさ・睡眠不良
https://taiyo-fukaya.com/blog/whiplash-fatigue-sleep/
■ 期間について何か言われたときに、当院ができること
施術を続けている途中で、期間についてお話が出ることがあります。
保険会社の担当者の方も業務として対応されているので、一定の期間で区切りを検討されるのは自然なことです。
そのときに当院ができるのは、症状の経過を正確に記録し、お伝えすることです。
いつ、どの動作で、どのくらい痛むのか。どこが楽になり、どこが残っているのか。当院はこれを毎回確認して記録しています。感覚的な訴えだけでなく、経過として残しておくことが、ご自身の状態を説明する材料になります。
そして、医師との連携です。先ほどの半年に及んだ方の場合も、医師に状態を深く理解してもらえたことが大きな支えになりました。当院だけで完結する話ではありません。
なお、示談や賠償の金額に関することは、当院がお答えできる範囲を超えます。そうしたご相談は、保険会社の担当者や、必要に応じて専門家にお尋ねください。
事故のあとの通い方全般については、こちらもご覧ください。
交通事故のあと、どこが痛みますか|1か所だけという方はほとんどいません
https://taiyo-fukaya.com/blog/traffic-accident-symptoms-overview-fukaya/
■ よくある質問
Q. 交通事故の施術で、窓口の支払いは本当にないのですか。
A. 相手方の自賠責保険から支払われる形になるため、お支払いがない場合が多くあります。ただし事故の状況によって扱いが変わることがあるため、保険会社にご確認ください。
Q. 整形外科に通っていますが、接骨院にも通えますか。
A. 通えます。交通事故では自賠責保険を使うため、健康保険のときのような併用の制限がありません。むしろ医療機関にもかかっていただくようお願いしています。
Q. お薬が出ていても通えますか。
A. 交通事故の場合は通っていただけます。普段のお怪我で健康保険を使う場合とは扱いが異なります。
Q. 事故から時間が経っていますが、今からでも通えますか。
A. ご相談ください。ただし時間が空くほど、事故との関係を説明するのが難しくなります。痛みが出た時点で早めにご連絡いただくのが確実です。
Q. 事故のあと、痛くなかったので病院に行きませんでした。
A. できるだけ早く受診してください。事故直後は体が緊張していて痛みを感じにくいことがあります。受診の記録がないと、後の手続きで難しくなります。
Q. どれくらいの期間通うことになりますか。
A. 症状によって大きく異なります。当院の記録では半年に及んだ方もいらっしゃいます。期間を先に決めるのではなく、経過を見ながらご相談していきます。
Q. 慰謝料について教えてもらえますか。
A. 申し訳ありませんが、賠償や示談の金額については当院がお答えできる範囲を超えます。保険会社の担当者にお尋ねください。当院がお伝えできるのは、お体の状態と経過です。
■ まとめ:お金の心配より先に、痛みを正確に伝えてください
交通事故の施術では、窓口でのお支払いがない形になることが多くあります。使うのが健康保険ではなく、相手方の自賠責保険だからです。そのため、病院と接骨院の両方に通うこともできます。
ですが、本当に大事なのはそこではありません。
事故のお怪我は、痛む場所が一か所で収まらないこと。引いていく順番がばらばらであること。そして、ご自身が言葉にしない痛みは誰にも伝わらないこと。当院の記録が示しているのはこの3つです。
少しでも気になる場所があれば、遠慮なく全部お話しください。当院は毎回それを記録して、経過として残していきます。
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【著者情報】
田島 陽平(たじま ようへい)/治療家・株式会社キュアクオリティ代表。柔道整復師として20年以上の臨床経験を持つ。整形外科・接骨院勤務を経て独立し、埼玉県深谷市・熊谷市で2院を経営。カイロプラクティック歴15年以上・オステオパシーを組み合わせた独自の施術スタイルで、坐骨神経痛・腰痛・肩こりなど慢性症状でお悩みの方のサポートを行っている。現在は国際基準のフランス式オステオパシーを学んでいる。
【参考文献】
柔道整復師等の施術にかかる療養費の取扱いについて(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/jyuudou/index.html
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療行為や診断を行うものではありません。症状が重い場合や長期間続く場合は、医療機関へのご相談をお勧めします。


