交通事故のあと、腕や肘が痛む。ぶつけた覚えがないのに、物を持ち上げるときや服を着替えるときにズキッとする。そんな状態で困っていませんか。

当院にも、事故のあとに腕や肘の痛みでご相談に来られる方がいらっしゃいます。そして実際にお話をうかがっていくと、痛いのは肘だけではなく、首も一緒に痛んでいることが少なくありません。

この記事では、深谷市で交通事故のケアを行ってきた立場から、腕や肘の痛みをどう捉えているかをお伝えします。

■ 事故のあと、腕や肘が痛むとき

事故の直後は、首や腰の痛みのほうが強く出ることがあります。そのため腕や肘の痛みは「たいしたことない」と後回しになりやすい部分です。

ただ、腕や肘は日常のあらゆる動作に関わります。カバンを持つ、ドアを開ける、服の袖を通す、髪を洗う。こうした動きのたびに痛みが出ると、生活の負担は思った以上に大きくなります。

そして交通事故の場合、初診の段階で痛む部位を漏れなく伝えておくことが大切だとされています。あとから「実は肘も痛かった」と申し出ても、事故との関係が確認しづらくなることがあるためです。少しでも気になる部位があれば、最初にすべて伝えておくことをおすすめします。

■ 肘が痛い方の多くは、首も一緒に痛んでいる

当院で交通事故のケアを行ってきた中で、腕や肘の痛みを訴える方には、ある共通点があります。

首の痛みが同時に出ている、という点です。

当院の交通事故の記録をあらためて見直したところ、交通事故で来院された15件の記録のうち、腕・肘・手首のいずれかに痛みがあった方は5件でした。そしてその5件とも、首の痛みを一緒に訴えておられました。5件という数は統計と呼べる規模ではありませんが、少なくとも当院で拝見してきた範囲では、腕や肘だけが単独で痛んでいたという方はいらっしゃいませんでした。

たとえば後方から追突されたとき、体はシートに押しつけられ、頭と首は遅れて振られます。このとき腕は、とっさにハンドルを握ったり、体を支えようとしたりして力が入っています。首から肩、腕にかけては、筋肉も神経も連続してつながっている場所です。首まわりに強い負担がかかったとき、その影響が肩や腕の側にも及ぶことがあると考えられています。

ですので当院では、肘が痛いというご相談であっても、肘だけを診るということはしません。首の動き、肩まわりの状態、背中の張り具合を一緒に確認していきます。

首の痛みそのものについては、こちらの記事でも詳しくお伝えしています。
交通事故のむち打ち、症状と回復の基本|深谷市の接骨院が自律神経症状から解説
https://taiyo-fukaya.com/blog/whiplash-recovery-basics/

■ ぶつけた覚えがないのに痛むことがある

「腕はどこにもぶつけていないのに、なぜ痛いのか分からない」というご相談もあります。

事故のときは、とっさに体を守ろうとして強い力が入ります。ハンドルを強く握り込む、シートの縁をつかむ、同乗者をかばう。こうした動作は一瞬のことですが、筋肉や関節にとっては急な負担になります。ぶつけていなくても痛みが出ることは、珍しいことではありません。

また、レントゲンで骨に異常がないと言われても、痛みが続く場合があります。画像に写るのは主に骨の状態であり、筋肉や関節まわりの細かい負担までは映りにくいとされているためです。

病院で「異常なし」と言われた後の進め方については、こちらでも整理しています。
交通事故後、病院で「異常なし」と言われても痛みが続く方へ|深谷市の接骨院が伝える治療終了後の選択肢
https://taiyo-fukaya.com/blog/traffic-accident-after-hospital/

■ 実際にあった例:側方衝突で首・肩・肘を痛めた20代の方

青信号で交差点を直進していたところ、信号を無視した車に側方から衝突された20代の男性の方です。事故当日に救急搬送され、その後、整形外科で首・右肩・右肘・腰の4部位を負傷していると診断されました。

初診の時点では、首を動かすだけでも痛みが出て、肩に触れるとかなり強く痛むという状態でした。

搬送先の病院では接骨院との併用ができないとのことでしたので、当院から知り合いの整形外科の先生をご紹介し、併診の形で進めていきました。

その後、痛みは段階的に和らいでいき、初診からおよそ3ヶ月が経った時点では、ほとんど痛みを感じないというところまで状態が変わっていきました。回復の早さや経過には個人差がありますので、期間はあくまでこの方の場合です。費用は自賠責保険が適用され、窓口でのご負担はありませんでした。

この方の場合も、痛みを訴えていたのは肩と肘でしたが、首の動きの制限が最後まで残りやすい部分でした。首の状態が変わっていくにつれて、腕を動かしたときの痛みも一緒に落ち着いていきました。

■ 実際にあった例:腕を使う仕事で、首・背中・肘が痛んだ40代の方

小川町にお住まいの40代男性で、車の整備士をされている方です。交差点内を走行中、後方から追突される事故に遭われました。

診断は頸部打撲症・背部打撲症・右肘捻挫。首・背中・右肘の痛みに加えて、右足と膝にあざができていました。むち打ちの症状が強く、初期には気持ち悪さも出ていたとのことです。初診の時点では、じっとしていても痛みが気になり、動かすとさらに強くなるという状態でした。

この方が一番困っておられたのは、体を動かすと痛みが出て、仕事に支障が出るという点でした。整備の仕事は腕を上げたり、力を入れて工具を扱ったりする動作の連続です。肘の痛みは、そのまま仕事のしづらさに直結します。

当院では、痛む肘まわりだけでなく、首と背中の状態を一緒に確認しながら進めていきました。

腕を使うお仕事の方は、痛みがあっても手を止めにくい状況に置かれがちです。だからこそ、早い段階でご相談いただくことが大切だと考えています。

■ 痛みの出方と、考えられる背景

痛みの出方関係していることがあるもの目安
ぶつけた部分がはっきり痛む打撲・捻挫など、その部位への直接の負担整形外科で状態を確認
肘だけでなく首や肩も痛む首から腕にかけてのつながりの中での負担首の動きもあわせて確認
ぶつけていないのに腕が痛む事故の瞬間に強く力が入ったことによる負担痛む動作を控えて相談
力が入りにくい・感覚が鈍い神経が関係していることがある早めに医療機関へ
画像で異常なしでも痛みが続く画像に映りにくい部分の負担医療機関と併用しながらケア

なお、力が入りにくい、手の感覚が鈍いといった症状がある場合は、自己判断で様子を見ずに、まず医療機関にご相談ください。

■ 腕を使う仕事の方が気をつけたいこと

整備士、配送、介護、製造、美容師など、腕を使うお仕事の方は、痛みがあっても仕事の手を止めにくいことが多いと思います。

無理に使い続けると、かばう動きが増えて、反対側の腕や肩、腰に負担が移っていくことがあります。痛みのある側だけの問題で終わらなくなる、ということです。

完全に休むことが難しい場合でも、痛みが強く出る動作を把握しておくだけで、負担の減らし方は変わってきます。どの動きで痛むのかを一度整理しておくと、仕事の組み立て方も考えやすくなります。

■ 病院と接骨院、どう使い分けるか

交通事故の場合、まず整形外科などの医療機関を受診し、診断を受けていただくことが基本です。骨や神経の状態を確認できるのは医療機関です。

そのうえで、当院のような接骨院での施術を併用される方が多くいらっしゃいます。前述の20代の方のように、搬送先の病院では併用ができないという場合もありますので、その際は併診できる医療機関をご紹介することもあります。

どちらか一方を選ばなければいけない、というものではありません。役割が違うものとして考えていただくと分かりやすいと思います。

■ 当院が腕・肘の痛みに対して行っていること

当院では、痛む部位だけを見るのではなく、首から肩、背中まで含めて状態を確認していきます。

肘の痛みが強い場合でも、首や肩の動きが制限されていれば、そちらも一緒に整えていきます。腕は肩につながり、肩は首と背中につながっています。つながりの中で見ていくことが、遠回りのようで結果的に近道になることがあると考えています。

施術の強さは、その日の状態に合わせて調整します。事故の直後で炎症が強い時期と、落ち着いてきてからの時期では、行うことも変わります。

■ 自宅で気をつけたいこと

・痛みが強く出る動作は、無理に繰り返さないでください
・重い物を持つときは、痛む側だけに頼らないようにしてください
・寝るときに腕の下敷きにならない向きを探してみてください
・痛みが強い時期に、痛む場所を強く揉むことはおすすめしません
・お風呂で温めていいかどうかは、時期によって変わりますので初回にご相談ください

■ よくある質問

Q. 腕をぶつけていないのに痛いのですが、事故と関係ありますか。
A. 事故の瞬間に強く力が入ったことで、腕や肘に負担がかかることがあります。気になる場合は、その旨も含めて医療機関にお伝えください。

Q. 肘だけ痛いのですが、首も見てもらったほうがいいですか。
A. 当院では首もあわせて確認しています。首から腕にかけては筋肉も神経もつながっているため、肘だけを見るよりも状態を把握しやすくなります。

Q. レントゲンで異常なしと言われましたが、痛みが続きます。
A. 画像に映りにくい部分の負担が関係していることがあります。医療機関に相談を続けながら、当院にもご相談ください。

Q. 腕を使う仕事なのですが、休まないといけませんか。
A. 完全に休めない方も多くいらっしゃいます。どの動作で痛みが出るかを整理して、負担の減らし方を一緒に考えていきます。

Q. 病院と接骨院は、両方通ってもいいですか。
A. 併用されている方は多くいらっしゃいます。病院での併用が難しい場合は、併診できる医療機関をご紹介することもあります。

Q. 交通事故の施術に費用はかかりますか。
A. 自賠責保険の対象となる場合があります。詳しくは初回にご案内します。

■ まとめ:痛む場所と、痛みの出どころは別のことがある

腕や肘が痛むとき、痛みを感じている場所と、その痛みの出どころが同じとは限りません。当院で交通事故のケアを続けてきた中では、肘の痛みを訴える方の多くが、首も一緒に痛めておられました。

ぶつけた覚えがなくても、画像で異常がないと言われても、痛みが続いているのであれば、それは確かめてみる価値のあるサインです。

まずは医療機関で状態を確認していただき、そのうえで気になることがあれば、当院にもお気軽にご相談ください。

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【著者情報】
田島 陽平(たじま ようへい)/治療家・株式会社キュアクオリティ代表。柔道整復師として20年以上の臨床経験を持つ。整形外科・接骨院勤務を経て独立し、埼玉県深谷市・熊谷市で2院を経営。カイロプラクティック歴15年以上・オステオパシーを組み合わせた独自の施術スタイルで、坐骨神経痛・腰痛・肩こりなど慢性症状でお悩みの方のサポートを行っている。現在は国際基準のフランス式オステオパシーを学んでいる。

参考文献(PubMedで実在と内容を確認しています)
・Pathology and Treatment of Traumatic Cervical Spine Syndrome: Whiplash Injury(むち打ちに関する総説。腕や手のしびれなどの症状が、画像検査では所見として写らないことが少なくないと述べられています)
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5851023/

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療行為や診断を行うものではありません。症状が重い場合や長期間続く場合は、医療機関へのご相談をお勧めします。