「今通っているところを変えたいのですが、保険はそのまま使えますか」
深谷市の当院に、ときどきいただくご相談です。
お答えは、どこから移られるかによって変わります。整形外科からであれば、まず問題なくお受けできます。ですが、他の接骨院からの移り替わりは、実際にはむずかしいことが多いのです。
これは院の都合ではなく、制度の仕組みからくるものです。この記事では、その理由と、移ってこられた方に当院が最初にお伝えしていることまでお話しします。
■ 整形外科からなら、移っていただけます
まず、いちばん多いケースからお話しします。
整形外科に通われていて、そこから接骨院に移りたいという場合です。これはお受けできます。
このとき当院が必要とするのは、患者さんご本人のお話だけです。前の医療機関から書類を取り寄せていただく必要はありません。
理由があります。整形外科にかかられている方は、受傷のきっかけがはっきりしていることがほとんどです。いつ、どうして痛めたか。それが分かっていて、そのうえでお薬や湿布で様子を見たけれど変わらなかった、という経過をたどっておられます。
ですから、その経過をそのまま引き継ぐ形になります。
ただしひとつ条件があります。前の医療機関での治療が続いている間は、移っていただくことができません。当院は、お薬が出ている期間を通院中と考えています。1ヶ月分の処方が出ているなら、その1ヶ月は治療中です。処方された分を終えてからのご相談になります。
■ 接骨院から接骨院への移り替わりは、実際にはむずかしいことが多くあります
こちらが本題です。
他の接骨院に通われていて、当院に移りたいというご相談。これは、お断りすることがあります。
理由をはっきりお伝えします。前の院がどういう内容で保険の請求をしていたのか、それが分からないと、当院で続きとして扱うことができないからです。
保険の請求には、どのお怪我についての施術なのかという記録がついています。当院が同じお怪我の続きとして請求するには、その記録と内容を合わせる必要があります。
そのためには、前の院からその記録を出していただくことになります。ただ、これが実際にはなかなか進みません。結果として、接骨院から接骨院への移り替わりは、前提としてほぼ成立しないとお考えいただくのが実情に近いです。
内容が合わないまま進めると、同じお怪我について二重に請求が上がってしまう可能性があります。そうなって困るのは、最終的には患者さんご自身です。ですから当院は、確認が取れない状態では受けません。
■ なぜむずかしいのか——請求の記録を合わせる必要があるからです
もう少し踏み込んでお話しします。ここを知っておいていただくと、断られた理由が分かると思います。
健康保険の療養費は、本来は償還払いという仕組みです。患者さんがいったん全額をお支払いになり、後からご自身で保険者に請求して払い戻しを受ける。これが原則です。
つまり、請求する権利は施術者ではなく、患者さんご本人にあります。
窓口で自己負担分だけをお支払いいただく形は、受領委任払いという特例です。患者さんから委任を受けて、当院が代わりに請求している。制度上はそういう建て付けになっています。
ご本人の権利に乗って請求している以上、その記録が途中で食い違うわけにはいきません。前の院での内容と、当院での内容。この2つが合っていないと、患者さんご自身の請求として筋が通らなくなります。
私たち柔道整復師は、診断をすることもできません。ですから当院が請求時にお伝えできるのは、こういう状態であると考えられます、という判断までです。断定された病名があるわけではない分、記録の整合はより慎重に扱う必要があります。
■ 交通事故の場合は、事情がまったく違います
ここは分けてお伝えします。
交通事故のお怪我については、上の話は当てはまりません。使うのが健康保険ではなく、相手方の自賠責保険だからです。
交通事故の場合は、整形外科に通いながら接骨院にも通えます。通う先を変えることも、健康保険のときほどむずかしくありません。
| どこから移るか | 当院の対応 | 必要なもの |
| 整形外科から(治療が終わっている) | お受けできます | ご本人のお話のみ |
| 整形外科から(お薬が出ている期間中) | 期間が終わってからお受けします | 処方の残りを確認 |
| 他の接骨院から | お断りすることがあります | 前の院の請求内容の確認 |
| 交通事故で通院中 | ご相談いただけます | 保険会社への連絡 |
| まったく別の症状で | お受けできます | ご本人のお話のみ |
■ 移ってこられた方に、当院が最初にお伝えすること
手続きの話が続いたので、中身の話をします。
院を変えようと思われる方は、たいてい「今度こそ変わるだろうか」という気持ちで来られます。当院がそこで最初にお伝えするのは、期待していただく話ではありません。
できることと、できないことです。
施術で扱えるのは、体の使い方から生まれている部分です。動かなくなっている関節、その分を引き受けて固まっている筋肉。そこには手を入れられます。
一方で、構造そのものが変わってしまった部分は戻せません。骨の変形やすり減りがそれにあたります。そして、日常生活の中でかかり続けている負荷も、施術では止められません。
この線を先に引いておかないと、また同じことになります。何回か通って変わらず、次の院を探す。それを繰り返すことになってしまいます。
■ 半年続いたしびれで移ってこられた方の話
当院の記録からお話しします。
清掃のお仕事をされている70代の女性です。右足のしびれが半年ほど続いていて、それまで通われていたところから当院に移ってこられました。
しびれについては、通っていただくうちに和らいでいきました。
その後、この方から別のご相談がありました。正座をしたあとに膝が強く痛む。これも診てほしい、というお話です。
このとき当院は、はっきりお伝えしました。この痛みは、施術で扱える範囲を超えています、と。
正座やしゃがみ込みで膝にかかる負担は、体重と重力によるものです。膝を深く曲げている間、血の巡りが妨げられ、立ち上がったときに一気に流れ出す。そのときに強い痛みが出ていると当院は見ました。
これは体の使い方の問題というより、その姿勢を取ること自体が負荷になっています。ですから施術で緩めても、また正座をすれば同じことが起きます。
お伝えしたのは、正座としゃがみ込みを避けていただくことでした。ご年齢を考えると、膝そのものに変化が出ている可能性もあります。そこは当院では確かめられません。
期待に応える答えではなかったと思います。ですが、できないことをできると言わないほうが、結果的にはご本人のためになると考えています。
しびれをどこから見ていくかについては、こちらでも詳しくお話ししています。
夜中に手のしびれで目が覚める方へ|「首から指先までを診る」理由
https://taiyo-fukaya.com/blog/carpal-tunnel-not-only-wrist/
■ 分野の違うところから移ってこられることもあります
接骨院や整形外科だけではありません。
顎の痛みで来られた50代の女性の記録です。歯科でマウスピースの治療を続けておられましたが変わらず、食事をするのもつらい状態でした。
当院が確かめたのは、顎そのものではありませんでした。背骨と骨盤、つまり体の土台のほうです。
姿勢が崩れて首が前に傾くと、首の前側の筋肉が引っ張られます。その緊張が、噛むための筋肉の硬さにつながっているのではないか。そう見立てて進めました。
これは歯科の治療が間違っていたという話ではまったくありません。歯科は噛み合わせと顎の関節そのものを見ます。当院が見るのは、そこに負担をかけている体の側です。見ている場所が違うのです。
ですから「前のところで変わらなかった」という経験は、必ずしもその治療が誤りだったことを意味しません。見る場所を変えると別のものが出てくることがある、というだけです。
顎の痛みについては、こちらでも詳しくお話ししています。
マウスピースを続けても顎の痛みが取れない方へ
https://taiyo-fukaya.com/blog/tmj-disorder/
■ 移る前に確かめておいていただきたいこと
ご相談の前に、次の3つを整理しておいていただけると話が早く進みます。
一つ目。いつ、どのようにして痛めたか。
出来事としてのきっかけがあるかどうかで、保険が使えるかどうかが変わります。思い出せる範囲で構いません。
二つ目。今どこにかかっていて、お薬は出ているか。
処方の期間中は当院で施術をお受けできません。いつ頃までの分が出ているかを確認しておいてください。
三つ目。前のところで何をしてもらっていたか。
同じことを繰り返しても仕方がないので、何をどのくらい続けたのかを教えてください。脊柱管狭窄症や腰椎ヘルニアと言われてから来られる方は、当院では珍しくありません。よそでの経過を引き継ぐことは、こちらにとって当たり前の仕事です。
■ よくある質問
Q. 整形外科から接骨院に移れますか。
A. 移れます。ご本人のお話だけで引き継げます。ただし処方されたお薬が出ている期間中はお受けしていません。
Q. 今通っている接骨院から移りたいのですが。
A. お断りすることがあります。前の院での請求内容を合わせる必要があり、その確認が実際には進みにくいためです。
Q. 前の院に黙って移ることはできますか。
A. おすすめしません。同じお怪我について二重に請求が上がると、患者さんご自身が困ることになります。
Q. 交通事故で通っていますが、変えられますか。
A. 交通事故は自賠責保険を使うため事情が異なります。保険会社にお伝えいただいたうえでご相談ください。
Q. まったく別の症状で診てもらうことはできますか。
A. できます。前にかかっていた症状と別のものであれば、そのままご相談いただけます。
Q. 前のところで良くならなかったのですが、こちらなら良くなりますか。
A. お約束はできません。当院が最初にお伝えするのは、できることとできないことの線引きです。そのうえで進めるかどうかをお決めください。
Q. 移りたい理由を聞かれますか。
A. お聞きします。責める意図ではなく、同じことを繰り返さないためです。何をどのくらい続けられたかを教えてください。
■ まとめ:どこから移るかで、できることが変わります
断られたとき、それは院の好き嫌いではありません。療養費はご本人の権利に乗って請求されるため、記録が食い違えば不利益を受けるのもご本人だからです。
そしてもうひとつ。院を変えても、施術で届く範囲そのものは広がりません。変わるのは見る場所です。だから当院は、期待の話より先に線を引きます。
いつ、どのように痛めたのか。今どこにかかっていて、お薬は出ているのか。その2つだけ持ってご連絡ください。
深谷市で通う院をお考えの方は、深谷たいよう接骨院・整体院のLINEからお気軽にご相談ください。
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【著者情報】
田島 陽平(たじま ようへい)/治療家・株式会社キュアクオリティ代表。柔道整復師として20年以上の臨床経験を持つ。整形外科・接骨院勤務を経て独立し、埼玉県深谷市・熊谷市で2院を経営。カイロプラクティック歴15年以上・オステオパシーを組み合わせた独自の施術スタイルで、坐骨神経痛・腰痛・肩こりなど慢性症状でお悩みの方のサポートを行っている。現在は国際基準のフランス式オステオパシーを学んでいる。
【参考文献】
柔道整復師等の施術にかかる療養費の取扱いについて(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/jyuudou/index.html
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療行為や診断を行うものではありません。症状が重い場合や長期間続く場合は、医療機関へのご相談をお勧めします。


