交通事故のあと、膝が痛い。ダッシュボードにぶつけた覚えがある。あるいは、ぶつけた覚えはないのに膝が気になる。

そんな状態で困っておられませんか。

膝は、事故のあとで後回しにされやすい場所です。首や腰の痛みが強いと、そちらに意識が向くためです。

この記事では、深谷市で交通事故のケアを行ってきた立場から、膝の痛みをどう捉えているかをお伝えします。

■ 交通事故のあと、膝が痛むとき

車での事故の場合、膝は前方にあるダッシュボードやハンドルの下あたりに近い位置にあります。

前から衝撃を受けたとき、体は前方へ動きます。このとき膝がぶつかることがあります。

バイクや自転車の事故では、転倒によって膝を打つことがあります。歩行中の事故でも同じです。

膝は、歩く・立ち上がる・階段を上るといった動作のすべてに関わります。痛みが残ると、移動そのものが負担になります。

■ ダッシュボードにぶつけた膝

「ダッシュボードに膝をぶつけた」というお話は、交通事故ではよくうかがいます。

このとき気をつけたいのは、ぶつけた瞬間の力が膝だけにとどまるとは限らないという点です。膝から股関節、そして骨盤や腰の方向へ力が伝わることがあると考えられています。

ですので当院では、膝をぶつけたと言われた場合も、股関節や腰の状態をあわせて確認します。

なお、ぶつけた直後に強く腫れている、体重をかけられないといった場合は、まず医療機関を受診してください。骨や靭帯の状態を確認できるのは医療機関です。

■ 膝だけが痛むという記録はありません

当院の交通事故の記録をあらためて見直してみました。

記録は15件。そのうち、膝の症状があったのは3件でした。そしてその3件は、すべて首や腰など他の部位も同時に痛めておられました。

膝だけが単独で痛んでいたという記録は、当院にはありません。

3件という数は統計と呼べる規模ではありません。ただ、少なくとも当院で拝見してきた範囲では、膝を痛めた方は必ず他の場所も痛めていました。

これは、事故のときに体全体が一度に力を受けているためだと考えられます。

■ 首や腰の陰で見落とされやすいこと

膝の痛みは、首や腰の痛みが強いときに後回しになりやすい部分です。

「首が一番つらいので、そちらを先に」と言われる方がいらっしゃいます。それ自体は自然なことです。

ただ、交通事故では、初診の段階で痛む部位を漏れなく伝えておくことが大切だとされています。あとから「実は膝も痛かった」と申し出ると、事故との関係が確認しづらくなることがあるためです。

「これくらいなら言わなくていいかな」と思う程度のものでも、まず伝えておいてください。

■ 実際にあった例:バイクの事故で膝を痛めた50代の方

深谷市にお住まいの50代の男性で、バイクを運転中に他のバイクと衝突する事故に遭われた方です。

整形外科でレントゲン検査を受け、左膝と首の2か所の負傷と診断されました。

一方、当院で確認したのは首・腰・左膝の3か所です。整形外科の診断には腰が含まれていませんでしたが、実際には腰の痛みも出ていました。

この方は「早く普通の生活に戻りたい」というお気持ちが強く、毎日通っていただきました。月に1〜2回は整形外科を受診しながら、それ以外の日は当院に通うという形です。

膝を打った方の場合、歩き方が変わることで腰にも負担がかかることがあります。膝だけを見ていると、この部分が抜けてしまいます。

■ 実際にあった例:膝と上半身を同時に痛めた60代の方

深谷市にお住まいの60代の女性の方です。交差点を直進していたところ、左側方から車と接触し、緊急搬送されました。

レントゲンとMRIの検査を受け、右前胸部の打撲・右肩部の打撲・右膝の打撲と診断されています。当院では首・両肩・前胸部・右肩部・右膝の痛みを確認しました。

上半身から膝まで、広い範囲に症状が出ていた方です。ご本人が困っておられたのは、家事が思うようにできないという点でした。

膝が痛むと立ち仕事がつらくなり、肩が痛むと物を持ち上げられなくなります。両方が重なると、家事の中でできることがかなり限られてしまいます。

■ 痛みの出方と、考えられる背景

痛みの出方関係していることがあるもの目安
ぶつけた部分がはっきり痛む打撲など、その部位への直接の負担整形外科で状態を確認
腫れている・体重をかけられない骨や靭帯の状態を確認する必要がある速やかに医療機関へ
曲げ伸ばしで痛む関節まわりへの負担どの角度で痛むか整理する
ぶつけていないのに膝が痛む歩き方の変化による負担腰や股関節もあわせて確認
膝と一緒に腰も痛む体全体が一度に力を受けたことまとめて確認する

なお、腫れが強い、体重をかけられない、膝が抜けるような感覚があるといった場合は、自己判断で様子を見ずに、まず医療機関にご相談ください。

■ 歩き方が変わると、他の場所に負担が移る

膝が痛むと、無意識にその側をかばって歩くようになります。

かばう歩き方が続くと、反対側の脚や、腰、股関節に負担が移っていきます。膝の痛みだけの問題では終わらなくなるということです。

前述の50代の方も、整形外科の診断には腰が含まれていませんでしたが、実際には腰の痛みが出ていました。

当院では、膝の状態を見ると同時に、歩き方や体の使い方の変化も確認するようにしています。

交通事故の治療全体の流れについては、こちらでも整理しています。
交通事故のむち打ち、症状と回復の基本|深谷市の接骨院が自律神経症状から解説
https://taiyo-fukaya.com/blog/whiplash-recovery-basics/

■ 病院で「異常なし」と言われた場合

膝のレントゲンで骨に異常がないと言われることがあります。

画像に写るのは主に骨の状態であり、そのほかの部分にかかった負担までは映りにくいとされています。骨に異常がないことは良いことですが、それは痛みが無いという意味ではありません。

痛みが続いているのであれば、そのことを医療機関に伝え続けてください。そのうえで、当院のような接骨院での施術を併用される方が多くいらっしゃいます。

病院で「異常なし」と言われた後の進め方については、こちらでも整理しています。
交通事故後、病院で「異常なし」と言われても痛みが続く方へ|深谷市の接骨院が伝える治療終了後の選択肢
https://taiyo-fukaya.com/blog/traffic-accident-after-hospital/

■ 当院が膝の痛みに対して行っていること

当院では、膝だけを見るのではなく、股関節・骨盤・腰、そして反対側の脚まで含めて状態を確認していきます。

事故の直後で炎症が強い時期は、強い刺激を避けて負担を減らすことを優先します。落ち着いてきてからは、曲げ伸ばしの制限が残っている部分を整えていきます。

歩き方の変化が出ている場合は、その点も含めて確認します。かばう動きが習慣になる前に気づけると、他の場所への負担を減らしやすくなります。

■ 自宅で気をつけたいこと

・腫れが強い時期に、無理に曲げ伸ばしをして確かめないでください
・階段の上り下りがつらい場合は、手すりを使ってください
・痛む側だけをかばう歩き方が続いていないか意識してみてください
・痛む場所を強く揉むことは、時期によってはおすすめしません
・膝が抜けるような感覚がある場合は、速やかに医療機関にご相談ください

■ よくある質問

Q. ダッシュボードに膝をぶつけました。受診したほうがいいですか。
A. まず医療機関で状態を確認してください。骨や靭帯の状態を検査で確認できるのは医療機関です。

Q. 膝は痛いのですが、首や腰は痛くありません。
A. 当院では他の部位もあわせて確認しています。あとから出てくることもあるためです。

Q. レントゲンで異常なしと言われましたが、痛みが続きます。
A. 画像に映りにくい部分の負担が関係していることがあります。医療機関に相談を続けながら、当院にもご相談ください。

Q. 膝をかばって歩いていたら、腰が痛くなりました。
A. かばう歩き方が続くと、他の場所に負担が移ることがあります。両方あわせてご相談ください。

Q. 膝が腫れているのですが、施術を受けられますか。
A. まず医療機関で状態を確認してください。腫れの原因によっては施術を控える必要があります。

Q. 交通事故の施術に費用はかかりますか。
A. 自賠責保険の対象となる場合があります。詳しくは初回にご案内します。

■ まとめ:膝だけを見ないという考え方

当院の記録では、膝を痛めた方は全員が他の部位も同時に痛めておられました。膝だけが単独で痛んでいたという記録はありません。

膝が一番つらいとしても、体は一度にまとめて力を受けています。そして膝の痛みは、歩き方を通して他の場所にも影響していきます。

だからこそ、膝だけを見るのではなく、つながりの中で確認していく必要があると考えています。

まずは医療機関で状態を確認していただき、そのうえで気になることがあれば、当院にもお気軽にご相談ください。

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【著者情報】
田島 陽平(たじま ようへい)/治療家・株式会社キュアクオリティ代表。柔道整復師として20年以上の臨床経験を持つ。整形外科・接骨院勤務を経て独立し、埼玉県深谷市・熊谷市で2院を経営。カイロプラクティック歴15年以上・オステオパシーを組み合わせた独自の施術スタイルで、坐骨神経痛・腰痛・肩こりなど慢性症状でお悩みの方のサポートを行っている。現在は国際基準のフランス式オステオパシーを学んでいる。

参考文献(PubMedで実在と内容を確認しています)
・The biomechanics of lower limb injuries in frontal-impact road traffic collisions(正面衝突での下肢の負傷の力学を扱った論文。膝がダッシュボードに当たると大腿骨に沿って力が加わり、股関節への負担につながることが述べられています)
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6306979/

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療行為や診断を行うものではありません。症状が重い場合や長期間続く場合は、医療機関へのご相談をお勧めします。