交通事故のあと、背中や肩が痛い。振り向くとつらい、深く息を吸うと響く。そんな状態で困っていませんか。

当院にも、事故のあとに背中や肩の痛みでご相談に来られる方がいらっしゃいます。そしてお話をうかがっていくと、痛みが背中側だけにとどまっていないことがあります。

この記事では、深谷市で交通事故のケアを行ってきた立場から、背中や肩の痛みをどう捉えているかをお伝えします。

■ 事故のあと、背中や肩が痛むとき

背中や肩は、首と腰の間にあって目立ちにくい場所です。首の痛みが強いと、そちらに意識が向いて後回しになりやすい部分でもあります。

ただ、背中は呼吸に関わり、肩は腕を動かすたびに使う場所です。痛みが残ると、深呼吸のたび、着替えのたびに気になることになります。

■ 痛みは背中側だけとは限らない

当院の交通事故の記録をあらためて見直してみました。

交通事故で背中や肩の症状があったのは9件。そのうち、体の前側、つまり胸のあたりまで痛みが及んでいた記録が残っているのは2件でした。

9件という数は統計と呼べる規模ではありません。ただ、少なくとも当院で拝見してきた範囲では、「背中の痛み」と言われてもその方の痛みが背面だけに収まっているとは限りませんでした。

だからこそ当院では、背中の痛みでご相談いただいたときも、胸のあたりや肋骨まわりの状態まで確認していきます。

■ シートベルトが守ってくれたぶんの負担

事故のとき、シートベルトは体を座席にとどめて大きなけがを防いでくれます。

一方で、体はベルトに強く押さえられます。ベルトが通っている肩から胸、そして反対側の腰にかけて、力が集中することがあると考えられています。

「ぶつけた覚えがないのに胸のあたりが痛い」という場合、この経路が関係していることがあります。

なお、胸や肋骨のあたりの痛みは、まず医療機関で確認していただくことをおすすめします。呼吸のたびに強く痛む、息が吸いにくいといった場合は特にそうです。

交通事故の治療全体の流れについては、こちらでも整理しています。
交通事故のむち打ち、症状と回復の基本|深谷市の接骨院が自律神経症状から解説
https://taiyo-fukaya.com/blog/whiplash-recovery-basics/

■ 実際にあった例:首・両肩と前胸部まで痛めた60代の方

深谷市にお住まいの60代の女性の方です。交差点を直進していたところ、左側方から車と接触する事故に遭われ、緊急搬送されました。

レントゲンとMRIの検査を受け、右前胸部の打撲・右肩部の打撲・右膝の打撲と診断されています。当院では首・両肩・前胸部・右肩部・右膝の痛みを確認しました。

この方が困っておられたのは、家事が思うようにできないという点でした。肩と胸の両方が痛むと、腕を上げる動作そのものがつらくなります。

背中側だけでなく前側も痛めていたことで、洗濯物を干す、高い場所の物を取るといった動作に幅広く影響が出ていました。

■ 実際にあった例:背中と肘を痛めた40代の整備士の方

小川町にお住まいの40代の男性で、車の整備士をされている方です。交差点内を走行中、後方から追突される事故に遭われました。

診断は頸部打撲症・背部打撲症・右肘捻挫。首・背中・右肘の痛みに加え、右足と膝にあざができていました。むち打ちの症状が強く、初期には気持ち悪さも出ていたとのことです。

整備のお仕事は、腕を上げたまま作業する時間が長くなります。背中と肩が痛むと、その姿勢を保つこと自体がつらくなります。

当院では、痛む背中だけでなく、首の動きと肩甲骨まわりの状態を一緒に確認しながら進めていきました。

■ 痛みの出方と、考えられる背景

痛みの出方関係していることがあるもの目安
肩甲骨の間が重く痛む背中まわりへの負担首の動きもあわせて確認
胸の前側も痛むシートベルトの経路に沿った負担まず医療機関で確認
深く息を吸うと痛む肋骨まわりが関係することがある早めに医療機関へ
腕を上げると肩が痛む肩の動きの制限どの角度で痛むか整理する
振り向くと背中に響く首と背中のつながりの中での負担首も一緒に確認する

なお、息が吸いにくい、強い痛みが続くといった場合は、自己判断で様子を見ずに、まず医療機関にご相談ください。

■ 呼吸がしづらいと感じる場合

「大きく息を吸うと背中に響く」というご相談をいただくことがあります。

背中と肋骨は連なって動いています。息を吸うと胸郭が広がり、背中側も一緒に動きます。そのため背中や肋骨まわりに負担が残っていると、呼吸のたびに気になることがあります。

ただ、呼吸に関わる症状は、体の内側の問題が関わっている可能性も考えなければなりません。事故のあとに息苦しさがある場合は、必ず医療機関を受診してください。

■ 肩甲骨まわりが動きにくくなること

背中の痛みが続くと、痛みをかばって肩甲骨の動きが小さくなることがあります。

肩甲骨は、腕を上げるときに一緒に動く骨です。ここの動きが小さくなると、腕を上げる角度が浅くなったり、無理に上げようとして別の場所に負担がかかったりします。

前述の60代の方も、肩と胸の痛みから腕を上げる動作がつらくなっておられました。当院では、痛む場所だけでなく、こうした動きの連鎖まで見るようにしています。

病院で「異常なし」と言われた後の進め方については、こちらでも整理しています。
交通事故後、病院で「異常なし」と言われても痛みが続く方へ|深谷市の接骨院が伝える治療終了後の選択肢
https://taiyo-fukaya.com/blog/traffic-accident-after-hospital/

■ 左右で痛み方が違うことがある

事故のとき、体は真正面から均等に力を受けるとは限りません。側方から接触されれば片側に、後方からの追突でも運転席と助手席では条件が変わります。

前述の60代の方は、左側方から接触される事故でしたが、痛めていたのは右の前胸部・右肩・右膝でした。ぶつけられた側と、痛みが出た側が同じとは限らないということです。

40代の整備士の方も、右肘の捻挫と右足・膝のあざという形で、右側に症状が寄っていました。

こうした左右の差は、事故の状況とあわせて確認しておく意味があります。「どちら側から来られましたか」「どちらの手でハンドルを握っていましたか」といったことをおうかがいするのは、そのためです。

■ 当院が背中・肩の痛みに対して行っていること

当院では、背中だけを見るのではなく、首・肩甲骨・肋骨まわり、そして胸の前側まで含めて状態を確認します。

事故の直後で炎症が強い時期は、強い刺激を避けて負担を減らすことを優先します。落ち着いてきてからは、動きが制限されている部分を整えていきます。

腕を上げる動作がつらい場合は、どの角度でつらいのかを確認しながら、無理のない範囲で動きを取り戻していきます。

■ 自宅で気をつけたいこと

・痛みが強い時期に、肩を大きく回す運動を繰り返すことは避けてください
・高い場所の物を取るときは、痛む側だけで手を伸ばさないようにしてください
・寝るときの向きで痛みが変わる場合は、楽な向きを探してみてください
・痛む場所を強く揉むことは、時期によってはおすすめしません
・息が吸いにくい感覚がある場合は、まず医療機関にご相談ください

■ よくある質問

Q. 背中が痛いのに、胸のあたりも痛みます。関係ありますか。
A. シートベルトの経路に沿って負担がかかることがあります。まず医療機関で確認していただき、そのうえでご相談ください。

Q. 深く息を吸うと背中が痛みます。
A. 背中と肋骨は一緒に動きますので、負担が残っていると呼吸で気になることがあります。ただし息苦しさを伴う場合は、必ず医療機関を受診してください。

Q. 腕が上がりにくくなりました。
A. 痛みをかばって肩甲骨の動きが小さくなっていることがあります。どの角度でつらいかを一緒に確認していきます。

Q. 首は痛くないのに、背中だけ痛みます。
A. 当院では首もあわせて確認しています。首の動きの制限が背中の張りに関わっていることがあるためです。

Q. 病院と接骨院は、両方通ってもいいですか。
A. 併用されている方は多くいらっしゃいます。併診できる医療機関をご紹介することもあります。

Q. 交通事故の施術に費用はかかりますか。
A. 自賠責保険の対象となる場合があります。詳しくは初回にご案内します。

■ まとめ:背中と前側は、つながって考える

背中や肩が痛むとき、その痛みが背面だけに収まっているとは限りません。当院の記録でも、体の前側まで痛みが及んでいた方がいらっしゃいました。

背中・肩・胸・肋骨は、ひとつのまとまりとして動いています。だからこそ、痛む場所だけを見るのではなく、そのまとまりごと確認していく必要があると考えています。

まずは医療機関で状態を確認していただき、そのうえで気になることがあれば、当院にもお気軽にご相談ください。

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【著者情報】
田島 陽平(たじま ようへい)/治療家・株式会社キュアクオリティ代表。柔道整復師として20年以上の臨床経験を持つ。整形外科・接骨院勤務を経て独立し、埼玉県深谷市・熊谷市で2院を経営。カイロプラクティック歴15年以上・オステオパシーを組み合わせた独自の施術スタイルで、坐骨神経痛・腰痛・肩こりなど慢性症状でお悩みの方のサポートを行っている。現在は国際基準のフランス式オステオパシーを学んでいる。

参考文献(PubMedで実在と内容を確認しています)
・Differences in Thoracic Injury Causation Patterns Between Seat Belt Restrained Children and Adults(シートベルト着用時の胸部の負傷パターンを調べた研究。肩ベルト・腰ベルトによる圧迫が胸部の負傷の主な原因として挙げられています)
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3503409/

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療行為や診断を行うものではありません。症状が重い場合や長期間続く場合は、医療機関へのご相談をお勧めします。