「肩こりがつらいので接骨院に行こう。保険が使えるなら安く済むはず」
そう思って来られる方は、とても多いです。
先に、はっきりお答えします。肩こりに健康保険は使えません。これは当院の方針ではなく、制度としてそう決まっています。
ただ、この記事でお伝えしたいのはその先です。使えないと分かったうえで、では何ができるのか。深谷市の当院で、以前は保険で通われていた方が自費の整体を選ばれた日の記録も含めて、包み隠さずお話しします。
■ 肩こりに健康保険は使えません。まずそこをはっきりお伝えします
健康保険の対象外になるものとして、公的な案内には次のように書かれています。
「単なる肩こり、筋肉疲労」
言葉を濁さず、そのまま対象外と明記されています。加えて、慢性の症状、病気からくる痛み、症状の改善が見られない長期の施術も対象外です。
つまり、何年も付き合ってきた肩こりで接骨院に来られても、健康保険を使うことはできません。当院でも自費でのご案内になります。
窓口でこれをお伝えすると、驚かれることがあります。接骨院は国家資格を持った施術者がいて、保険が使える場所だと聞いていたのに、と。その感覚はもっともだと思います。だからこそ、来ていただく前にお伝えするようにしています。
■ なぜ使えないのか——制度が見ているのは「お怪我かどうか」です
健康保険が対象としているのは、骨折・脱臼・打撲・捻挫(いわゆる肉ばなれを含む)です。しかも、急性または亜急性の、外傷性のものに限られます。
ここでいう外傷性とは、いつ・どうして痛めたかがはっきりしている、ということです。
階段を踏み外して足首をひねった。荷物を持ち上げた瞬間に腰にきた。ぶつけて腫れている。こうしたものには、はっきりした出来事があります。
一方で肩こりはどうでしょうか。
いつからか分からない。何かをした瞬間になったわけでもない。気づいたら重くなっていて、そのまま何年も続いている。
制度が「お怪我」として扱うのは前者だけです。肩こりが対象外なのは、施術が要らないという意味ではなく、出来事としてのお怪我ではないからです。
| ご自身の状況 | 健康保険 |
| いつ・どの動作で痛めたか言える(1ヶ月以内) | 使える可能性がある |
| 気づいたら肩が重くなっていた | 使えない(自費) |
| 何年も肩こりと付き合っている | 使えない(自費) |
| 寝違えて急に首が回らない | 使える可能性がある |
| デスクワークのあと決まって張る | 使えない(自費) |
当院に寄せられたご相談を振り返ると、いちばん多いのは肩こり、自律神経の不調、首の痛みです。上位を占めるのは、どれもはっきりした受傷のきっかけを持たないものです。つまり、実際に多いのは保険が使えない側なのです。
■ 「前は保険で通えたのに」と言われることがあります
これもよくお聞きします。
理由はいくつか考えられます。以前は寝違えやぎっくり腰など、はっきりしたお怪我で来られていたのかもしれません。あるいは、院によって判断が分かれる場面があるのも事実です。
当院がお伝えできるのは、当院の基準だけです。
原因がはっきりしていて、なおかつ1ヶ月以内のお怪我であれば、健康保険で施術します。これは法律で決まった数字ではなく、柔道整復師の業界で一般的に言われている実務上の目安を、当院が基準として採用しているものです。
ですから「前と違う」と感じられることはあると思います。その場合も、なぜ今回は自費なのかという根拠は必ずご説明します。
■ 保険で通われていた方が、自費の整体を選ばれた日の話
ここから、当院の記録をお話しします。
デスクワーク中心で残業の多い、26歳のエンジニアの方です。以前から当院に通院歴のある方でしたが、そのときは保険での施術でした。しばらく間が空いて、久しぶりに来られたのがこの日です。
このときのご相談は、肩こりと首の強い張りでした。左右ほぼ同じくらい。加えて、目の疲れ。乾く感じはないけれど、痛みを感じる。さらに、自律神経の不調も訴えておられました。
このご相談は、健康保険では対応できません。ぶつけたりひねったりして起きたものではないからです。
そこでこの日、この方は自費の整体を受けられました。この方にとっては初めての自費の施術でした。
保険から自費へ切り替わる場面というのは、実際にはこういう形で訪れます。同じ方の、同じ肩まわりの相談であっても、それが出来事としてのお怪我なのか、積み重なってきたものなのかで、扱いが変わるのです。
■ 自費で何を確かめているのか——首だけを見ていません
「自費です」とお伝えするだけでは、何をしてもらえるのか分かりません。この方に何を確かめたのかをお話しします。
まず姿勢を見ました。頭が体より前に出ていること、骨盤が前に傾いていること、腰が反っていること。この3つが揃っていました。
長くデスクワークを続けていると、体はこの形に落ち着いていきやすいと考えられています。頭が前に出れば、その重さを首と肩の後ろ側が支え続けることになります。
ここで一つ、肩こりについて当院がお伝えしていることがあります。
肩こりというと、筋肉が縮んで固まっているイメージを持たれる方が多いのですが、実際にはその逆のことが起きている場合があります。頭が前に出た姿勢では、首の後ろから肩にかけての筋肉は引き伸ばされた状態です。伸ばされながら、頭を支えるために力を出し続けている。この状態が続くと、伸ばされたまま固まっていきます。
ですから、揉んでその場は楽になっても戻るのです。姿勢が元のままなら、筋肉はまた同じ仕事を続けることになります。
この方には、座り方を宿題としてお渡ししました。坐骨で座ること、骨盤を立てること、お腹で体を支えること。施術で緩めた状態を、日常の姿勢の側から支えていただくためです。
肩こりが戻ってしまう仕組みについては、こちらでも詳しくお話ししています。
マッサージしてもすぐ戻る肩こりへ|自律神経との関係
https://taiyo-fukaya.com/blog/shoulder-stiffness-autonomic/
■ 長年の肩こりは、どれくらいの時間がかかるのか
正直にお答えします。時間はかかります。
長年の肩こりに、めまいのふわふわ感と偏頭痛を伴っていた50代の女性の記録です。
来られた当初、背骨の形に特徴がありました。本来は緩やかなS字のカーブを描いているはずの背骨が、胸のあたりでまっすぐになり、腰のあたりでは逆向きに丸まっていました。カーブが失われている状態です。
通っていただくうちに、この背骨に変化が出てきました。失われていた生理的なカーブが、少しずつ出始めたのです。目で見て分かるような大きな歪みは、ほぼ解消しました。肩の重さについても、ご本人から以前より楽になってきたというお話が出るようになりました。
ただ、その途中で台風が近づいた時期がありました。気圧が変わったタイミングで、めまいと偏頭痛の波が戻ってきました。
これが慢性の症状の実際です。まっすぐ右肩上がりに良くなっていくわけではなく、波を打ちながら、少しずつ土台が変わっていきます。
ここまで来ると、悪くなる場所のパターンが見えてきます。そうなれば、次はその状態を保っていく段階です。
■ 自費のほうが良いものだから勧めている、ということではありません
誤解のないようにお伝えしておきます。
当院が自費の整体をご案内するのは、保険の枠では対応できないからです。効果が高いからこちらにしましょう、というご案内の仕方はしていません。
順番はいつも同じです。まず、その症状が制度上のお怪我にあたるかどうかを見ます。あたるなら保険で施術します。あたらないなら、自費でのご案内になります。
ですから「保険が使えないので自費です」という説明が先で、「自費のほうが良いですよ」という説明は当院からはしません。
なお、お怪我と慢性の症状の両方をお持ちの場合は、切り分けてご説明します。お怪我の部分は保険で、その背景にある体の使い方の問題は別の軸として自費で、という形です。
このとき、お怪我そのものの施術に自費を上乗せすることはありません。保険で施術をして、長く時間を取ったから追加料金、といった形は認められていないからです。当院は接骨院としての施術と自費の整体を混ぜずに分けてご案内し、お会計も保険の一部負担金と自費の料金を分けてお伝えします。いまどちらを受けているのかが、ご自身で分かる状態にしておきたいからです。
■ それでも保険が使える肩の痛みもあります
肩の相談すべてが自費というわけではありません。
寝違えて急に首が回らなくなった。荷物を持ち上げた拍子に肩を痛めた。転んで肩を打った。こうした、いつ・どうしてが言えるものは、健康保険の対象になり得ます。
ですから、ご自身で「どうせ肩こりだから自費だろう」と決めてしまわないでください。お電話の段階で、いつから・どのようにして・どういう症状なのかを詳しくお伺いします。そのうえで、来ていただく前に保険が使えるかどうかをお伝えします。
めまいや耳鳴りを伴う場合の考え方については、こちらでも触れています。
めまい・耳鳴り・ホットフラッシュが1年半続いた方へ
https://taiyo-fukaya.com/blog/dizziness-tinnitus-autonomic/
■ よくある質問
Q. 肩こりで健康保険は本当に使えないのですか。
A. 使えません。単なる肩こりや筋肉疲労は健康保険の対象外と明記されています。これは院ごとの方針ではなく制度上の決まりです。
Q. 肩こりがひどくて日常生活に支障があります。それでも対象外ですか。
A. つらさの程度ではなく、お怪我かどうかで判断されます。日常生活に支障があるほどの肩こりでも、はっきりした受傷のきっかけがなければ対象外です。
Q. 前に行った接骨院では肩こりで保険が使えました。
A. 院によって判断が分かれる場面があるのは事実です。当院は原因がはっきりした1ヶ月以内のお怪我を基準としてお伝えしています。
Q. 自費だと何が変わるのですか。
A. 見る範囲が変わります。当院の場合は、痛む場所だけでなく姿勢や背骨全体の形まで確かめて、戻ってしまう理由のほうに手を入れていきます。
Q. どれくらい通えば良くなりますか。
A. 一律にはお答えできません。長年続いた肩こりは、良くなる途中で波が出ることもあります。目安ではなく、今どの段階にいるかをその都度ご説明するようにしています。
Q. 病院で肩の治療を受けていますが、通えますか。
A. 同じ症状について医療機関で治療中の場合、健康保険を使うことはできません。通院中の医療機関については正直にお聞かせください。
Q. 寝違えは保険の対象になりますか。
A. 対象になり得ます。いつ・どのようにして起きたかがはっきりしていれば、お怪我として扱えます。まずはお電話でお聞かせください。
■ まとめ:使えないと分かったうえで、何ができるかを選んでください
肩こりに健康保険は使えません。これは制度の話であって、施術が要るか要らないかの話ではありません。
大事なのは、使えないと分かったうえで、その院が何を確かめて何をしてくれるのかです。当院は、揉んで終わりにせず、なぜ戻るのかという理由のほうを見ています。頭の位置、骨盤の傾き、背骨のカーブ。そこが変わらなければ、筋肉は同じ仕事を続けるからです。
そして時間はかかります。波も出ます。それも含めて先にお伝えするのが、当院の考える誠実さです。
いつから、どのようにして肩が重くなったのか。それだけ持ってご連絡ください。保険が使えるかどうかを、来ていただく前にお答えします。
▼この症状の専門ページ:肩こりについて詳しくはこちら|深谷たいよう接骨院
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【著者情報】
田島 陽平(たじま ようへい)/治療家・株式会社キュアクオリティ代表。柔道整復師として20年以上の臨床経験を持つ。整形外科・接骨院勤務を経て独立し、埼玉県深谷市・熊谷市で2院を経営。カイロプラクティック歴15年以上・オステオパシーを組み合わせた独自の施術スタイルで、坐骨神経痛・腰痛・肩こりなど慢性症状でお悩みの方のサポートを行っている。現在は国際基準のフランス式オステオパシーを学んでいる。
【参考文献】
柔道整復師等の施術にかかる療養費の取扱いについて(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/jyuudou/index.html
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療行為や診断を行うものではありません。症状が重い場合や長期間続く場合は、医療機関へのご相談をお勧めします。


