お尻が痛いのか、太ももの裏なのか、ふくらはぎなのか、足の裏なのか。

坐骨神経痛と言われても、人によって痛む場所はまるで違います。そして実は、その違いには意味があります。

深谷市の当院が最初にお伝えしているのは、坐骨神経痛は病名ではない、ということです。症状の呼び名でしかありません。原因はいくつかに分かれていて、どこに出ているかは、その原因を絞り込む大事な手がかりになります。

この記事では、痛む場所の説明だけで終わらせず、その場所から何が読み取れるのかまでお話しします。

■ 坐骨神経痛は、病名ではありません

まず、ここをはっきりさせておきます。

坐骨神経は、腰のあたりから出て、お尻を通り、太ももの裏を下って、膝の裏で枝分かれし、ふくらはぎや足先まで届いている神経です。体の中で最も太い神経です。

この神経の通り道に沿って、痛みやしびれが出ている状態。それを坐骨神経痛と呼んでいます。

つまり、症状の呼び名です。「熱がある」と言っているのと似ていて、それ自体は原因を示していません。

当院に来られた方に、実際にこうお伝えしたことがあります。運転と配送のお仕事をされている60代の男性で、仕事中に重い荷物を積み下ろしたあと、急にふくらはぎが痛くなった方です。痛みは歩くのが難しいほどで、その場にしゃがみ込んでしまうくらいの強さでした。

この方には3年前にも、同じような症状が出たことがありました。そのときは整形外科でレントゲンを撮り、異常なしと言われています。その後、接骨院で矯正を受けて症状は落ち着いたそうです。今回はまだ画像の検査を受けていない状態で来られました。

「坐骨神経痛というのは症状の名前であって、病名ではありません。原因はヘルニアかもしれないし、脊柱管狭窄症かもしれないし、すべり症かもしれない。いくつもの可能性があります」

この説明を最初にしておかないと、「坐骨神経痛だと言われた」という言葉だけが独り歩きして、次に何を確かめればいいのか分からなくなってしまいます。

この方も来院されたとき、「前と同じやつだと思う」とおっしゃっていました。3年前と似た出方をしていたからです。ですが同じ出方でも、背景が同じとは限りません。

■ 原因はいくつかに分かれます

腰の骨の間のクッションが神経を圧迫しているのか。背骨の中の神経の通り道が狭いのか。お尻の奥の筋肉が神経を刺激しているのか。骨盤の関節が働いていないのか。

どれも「お尻から足にかけて痛い」という同じ形で出ます。ですが確かめる場所も、手を入れる場所も違います。呼び名で満足すると、この分かれ道の前で止まってしまいます。

考えられる原因症状が出やすい場所特徴として言われること
腰椎椎間板ヘルニアお尻から太もも裏・ふくらはぎ・足先まで筋状に前かがみでつらいことが多い
脊柱管狭窄症両足に出ることもある・ふくらはぎに強い歩くと出て、休むと楽になることがある
お尻の筋肉(梨状筋)お尻の奥から太もも裏座り続けるとつらくなることがある
骨盤の関節(仙腸関節)お尻の上のほう・太もも裏片側に出ることが多い
坐骨神経以外の神経太ももの前・外側坐骨神経の通り道と合わない

最後の行は特に大事です。太ももの前面や外側に出ている場合、そこは坐骨神経が通る道筋ではありません。坐骨神経は、お尻から太ももの裏側を通ります。

当院の記録を振り返ると、足のしびれで来られた方の背景は、腰椎ヘルニア、脊柱管狭窄症、お尻の筋肉の問題と、いくつにも分かれています。同じ「足がしびれる」で来られても、中身は同じではありません。

■ 確かめ方その1——どこに出ているか

当院が最初に確かめるのは、症状の出ている場所です。

神経は、どこを通ってどこへ向かうかが決まっています。ですから、痛みやしびれの範囲をたどると、どのあたりで問題が起きているのかの見当がつきます。

見ているのは、こういうことです。

ひとつの筋のように細長く出ているのか、それとも面で広がっているのか。片側だけか、両側か。膝から下まで届いているか、太ももで止まっているか。足の裏や指先まで来ているか。

先ほどの60代の男性の場合、お尻から太ももの裏、そしてふくらはぎへと下がっていく出方をしていました。坐骨神経の通り道に沿った、典型的な広がり方です。

一方で、太ももの前面に出ている方もいらっしゃいます。その場合は坐骨神経では説明がつかないので、別の神経の関与を考えることになります。

■ 確かめ方その2——どの姿勢でつらくなるか

もうひとつが、姿勢による変化です。

前かがみになったときにつらいのか、反ったときなのか。立っているときか、座っているときか。歩いていて出てくるのか。

先ほどの男性は「運転している間は平気なんです」とおっしゃいました。ところが車から降りて立ったり歩いたりすると強くなる。そして体を反らせると、しびれが増しました。

立っていると強く、座ると軽くなる。反らすと増す。この組み合わせから、当院はひとつの可能性を考えました。ただし、断定はしていません。当院は診断ができないからです。あくまで一つの可能性としてご説明したうえで進めています。

3年前のレントゲンで異常なしと言われていたことも、ここでは判断材料になります。骨の形に大きな問題が見つからなかったということは、痛みの原因が骨以外の場所にある可能性を考えてよい、ということだからです。

■ 症状が戻ったとき、当院が最初に疑うのは施術ではありません

もうひとつ、当院の考え方がよく出ている記録をお話しします。

エステを経営されている60代の女性です。前かがみの姿勢で長時間施術をされるお仕事で、ヘルニアによる左側のしびれがありました。

確かめたところ、前かがみの姿勢が続くことで肋骨が後ろに張り出し、その分だけ胸まわり全体が丸くなっていました。そして胸が丸まると、それに引っ張られる形で首の反りが強くなります。腰の症状の背景に、体の上のほうまで連なる流れがあったということです。

通っていただく中で症状は落ち着き、間隔をあけて様子を見られるようになりました。

ところがしばらくして、また少ししびれが出てきたと来られました。このときのご本人のお話は「また悪くなったから治してほしい」というものでした。

このとき当院が疑ったのは、施術のやり方ではありません。日常生活の側です。

安定していた状態から戻ったのであれば、体の使い方のどこかが元に戻っている可能性が高い。そう考えて、まず座り方を確認しました。ご本人は「言われた通りやっている」とおっしゃいます。それでも実際に座っていただくと、少しずつ元の形に戻っていることがあります。悪気があるわけではなく、体が楽なほうへ勝手に寄っていくからです。

原因を体の外に置いたままだと、何度でも同じことが起きます。だから当院は、戻ったときこそ生活の側を見ます。

腰のヘルニアと坐骨神経痛の関係については、こちらでも詳しくお話ししています。
腰椎ヘルニアの手術後も坐骨神経痛が再発する方へ
https://taiyo-fukaya.com/blog/sciatica-after-hernia-surgery/

■ お尻の奥の筋肉が関係していることもあります

原因のひとつとして挙げた、お尻の筋肉についても触れておきます。

骨盤の奥に、梨状筋という筋肉があります。坐骨神経は、この筋肉のすぐそばを通って足のほうへ下りていきます。ですからこの筋肉が硬くなると、神経が刺激されることがあると考えられています。

この場合、腰の骨には問題が見当たらないことがあります。腰のレントゲンばかり見ていると、行き当たらない場所です。

お尻の奥の筋肉という視点については、こちらで詳しくお話ししています。
深谷市で腰痛にお悩みの方へ|「梨状筋」という視点
https://taiyo-fukaya.com/blog/lumbago-piriformis/

■ ご自宅で観察しておいていただきたい3つのこと

ご相談の前に、次の3つをメモしておいていただけると、当院が確かめる場所を大きく絞れます。

ひとつ目。どこに出ているか。お尻か、太ももの裏か、前か、外側か、ふくらはぎか、足の裏か。指でなぞれるくらい細長いか、面で広がっているか。

ふたつ目。どの姿勢で強くなるか。前かがみか、反ったときか。立っているときか、座っているときか、歩いているときか。

みっつ目。片側だけか、両側か。

この3つが分かっているだけで、話がまったく変わります。

■ 医療機関を先に受診していただきたい場合

当院は画像を撮ることも、診断をすることもできません。だからこそ、先に医療機関へ行っていただきたい場合をはっきりお伝えします。

足に力が入らない、つまずくようになった。感覚が明らかに鈍い。おしっこが出にくい、または漏れる。安静にしていても強い痛みが続く。発熱を伴う。転んだり事故に遭ったりしたあとから始まった。

こうした場合は、まず受診してください。画像でしか分からないことがあります。

歩くと出て休むと治まるという出方をする場合も、一度確かめておいたほうが安心です。
歩くと足が痛くなり、休むと歩ける方へ|間欠性跛行の見分け方と実例
https://taiyo-fukaya.com/blog/intermittent-claudication-fukaya/

■ 坐骨神経痛でやらないほうがいいこと

当院が実際の記録から感じていることを挙げます。

ひとつ目。痛みが増す方向に、動かし続けないでください。

先ほどの60代の男性は、体を反らせるとしびれが強くなりました。こういうときに「伸ばせば良くなる」と考えて反らし続けると、増した方向に負担をかけ続けることになります。ご自分で動かす場合は、症状が軽くなる方向を選んでください。

ふたつ目。良くなったからといって、元の姿勢に戻さないでください。

エステを経営されていた女性が、落ち着いたあとにまた症状を出されたとき、当院がまず確認したのは座り方でした。体が変わっても、日常の姿勢が元に戻れば、負担も元に戻ります。

みっつ目。坐骨神経痛という言葉で止まらないでください。

呼び名が分かっただけでは、何をすべきかは決まりません。どこに出ているか、どの姿勢でつらいか。そこまで確かめて、はじめて次が決まります。

よっつ目。力が入らない・感覚が鈍いのに、様子を見続けないでください。

これは後述しますが、施術で様子を見てよい状態ではありません。

■ よくある質問

Q. 坐骨神経痛はどこが痛くなるのですか。
A. お尻から太ももの裏、ふくらはぎ、足先までのどこかです。人によって範囲が違い、その違いが原因を絞る手がかりになります。

Q. 太ももの前が痛いのですが、坐骨神経痛ですか。
A. 坐骨神経は太ももの裏側を通ります。前面や外側の症状は、別の神経が関わっている可能性を考えます。

Q. 両足に出ることはありますか。
A. あります。両側に出る場合は、背骨の中の神経の通り道が狭くなっているケースなどが考えられます。

Q. 接骨院で原因を特定してもらえますか。
A. 特定はできません。柔道整復師には診断の権限がないためです。当院は出ている場所と姿勢の変化から、可能性を絞るところまでを行います。

Q. どのくらいで良くなりますか。
A. 原因によって大きく変わります。まず何が起きているのかを絞るところから始めさせてください。

Q. 足の裏までしびれます。これも坐骨神経痛の範囲ですか。
A. 坐骨神経は膝の裏で枝分かれして足先まで届くため、範囲としては含まれます。ただし両足に均等に出ている場合は別の原因も考えられるので、一度医療機関でご相談ください。

Q. 痛む場所が日によって変わります。
A. 珍しいことではありません。どの範囲で変わるのかを覚えておいていただけると手がかりになります。

■ まとめ:呼び名ではなく、原因で分けてください

「坐骨神経痛です」と言われた時点では、まだ何も決まっていません。そこから先、どこに出ているか・どの姿勢でつらいかを足して、はじめて次が決まります。

当院は診断ができないので断定はしません。その代わり、この2つを積み上げて可能性を絞ります。

どこがどう痛むのか。それだけ持ってご相談ください。

▼関連ページ:手足のしびれへの施術について詳しくはこちら|深谷たいよう接骨院・整体院

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【著者情報】
田島 陽平(たじま ようへい)/治療家・株式会社キュアクオリティ代表。柔道整復師として20年以上の臨床経験を持つ。整形外科・接骨院勤務を経て独立し、埼玉県深谷市・熊谷市で2院を経営。カイロプラクティック歴15年以上・オステオパシーを組み合わせた独自の施術スタイルで、坐骨神経痛・腰痛・肩こりなど慢性症状でお悩みの方のサポートを行っている。現在は国際基準のフランス式オステオパシーを学んでいる。

【参考文献】
柔道整復師等の施術にかかる療養費の取扱いについて(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/jyuudou/index.html

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療行為や診断を行うものではありません。症状が重い場合や長期間続く場合は、医療機関へのご相談をお勧めします。