朝起きると腰が痛い。でも、起きてしばらく動いていると楽になる。だから毎朝「またか」と思いながら、なんとなくやり過ごしている。
深谷市の当院には、この「朝の腰」のご相談が繰り返し寄せられます。
この記事では、なぜ朝に腰が痛みやすいのかという体の仕組みと、実際の初診でお二人の腰に何が見つかったかという実例、そして「動けば楽になるから大丈夫」と言い切れない理由をお話しします。
■ 朝起きると腰が痛いのに、動くと楽になる——なぜか
朝の腰痛には、日中の腰痛と違う特徴があります。動き始めがいちばん痛く、体が温まると楽になることです。
理由のひとつは、一晩中ほぼ同じ姿勢でいたことです。寝ている間は筋肉を大きく動かさないため、腰まわりの血の巡りがゆっくりになり、筋肉がこわばった状態で朝を迎えやすくなります。こわばった筋肉は動き出しに痛みを出しやすく、動いて温まると楽になるのは、この部分が緩んでいくためと考えられます。
もうひとつ、背骨側の理由もあります。
■ 朝の腰に何が起きているか——椎間板の水分と一晩の同じ姿勢
背骨の骨と骨の間には、椎間板というクッションが挟まっています。
この椎間板は水分を多く含んでいて、その量は1日の中で変動することがMRIを使った研究で報告されています。日中は立って過ごすうちに水分が押し出されて少し縮み、夜横になっている間に水分を吸って膨らむ——つまり朝の椎間板は、1日でいちばん張っている状態と考えられます。
張っているクッションは、その分だけ曲げ伸ばしへの余裕が少なくなります。朝イチに前かがみで顔を洗う・靴下を履くといった動作で腰にピキッと来やすいのは、この仕組みが関係していると考えられています。
だから「朝は痛いけど動けば楽になる」こと自体は、体の仕組みとして自然な面があります。問題は、その痛みが強くなっていないか・長引いていないかです。ここから、実例で見分け方をお話しします。
■ 見分けの入口——前かがみで痛いか、反って痛いか
当院が初診で必ず確かめることのひとつが、どの動きで痛むかです。大づかみに言うと、こう見ています。
| 動き | 痛むときに考えやすいこと |
| 前かがみで痛い | 筋肉側の問題が関係していることが多い |
| 反ると痛い | 関節や骨格の構造側の問題(歪み・姿勢)が関係していることが多い |
| 朝だけ痛く、日中はほぼ出ない | 寝ている間の姿勢・筋肉のこわばり・椎間板の張りの影響 |
| 朝も日中も痛い(常時痛) | 積み重なった負担が飽和してきているサインのことも。※夜間痛・発熱などを伴う場合は先に医療機関へ(後述) |
これはあくまで入口の目安で、実際には組み合わさって出ます。ただ、「自分は前かがみと反り、どちらで痛いのか」を観察しておくだけで、ご相談いただいたときに当院が確かめる場所は大きく絞れます。
■ 実例:朝起きたら痛くなった営業職の方——痛かったのは腰ではなく、お尻の関節でした
初診の実例をお話しします。
30代の営業職の男性で、「朝起きたら腰が痛くなっていた」という急な発症でした。起き上がる時・反った時・歩く時・座っている時に痛む。発症から1〜2週間たっても痛みが残っている、という状態です。
検査をすると、前かがみは痛くない。反ると痛い。つまり筋肉よりも、関節や構造の側が疑わしい。痛む場所を指さしてもらうと、腰の真ん中ではなく、骨盤の後ろにある仙腸関節(せんちょうかんせつ)というお尻側の関節でした。
姿勢を見ると、立っているときは骨盤が前に倒れて腰が反り、座るとむしろ骨盤が後ろに倒れて背中全体が丸まる——立つ姿勢と座る姿勢で正反対の負担が交互にかかっていました。お仕事は1日3〜4時間の運転と現場作業。この往復が、毎日この方の腰に別方向の負担を積んでいたと考えられます。
「朝起きたら急に痛くなった」ように見えて、実際に見つかったのは、急に起きたものではない積み重ねでした。
■ 「急に痛くなった」の下に、慢性の土台が隠れていることがあります
この方には、高校生の頃からの慢性的な腰の重さ(「詰まってる感じ」)がありました。
当院では、こうした状態を2つの層で説明しています。土台に慢性の血の巡りの悪さがあり、その上に急性の痛みが乗っている。だから治りが遅く、繰り返す——初診で実際にお伝えしている、当院の見立てです。
急性の痛みだけを取っても、土台が残っていれば、また別の朝に同じことが起きます。発症から1週間で引いていく痛みなら自然な経過のことも多いですが、2週間残っているなら、土台側を疑い始める時期です。
■ 実例:朝だけの痛みが、常時の痛みに変わっていった方
もうひとつ、進み方を見ていただきたい実例があります。
事務職の女性で、朝起きたときの背中の中央から腰にかけての痛みで始まりました。それが、来院された時点では「痛くない時が少ない」——ほぼ常時痛む状態にまで進んでいました。過去にはぎっくり腰のようなエピソードを繰り返した経歴もある方です。
この方の初診で印象的だったのは、ご本人の言葉です。「長距離を歩けなくなるのが、一番怖い」。
だから当院は、この方とのゴールを「痛みをゼロにする」ではなく、ウォーキングを再開できる・趣味の活動を続けられるという、生活の回復に置きました。痛みの数字を追うことより、その方の毎日が戻ることの方が大事だからです。
朝だけだった痛みが常時痛に変わるまでには、時間があります。その時間は、放置の時間にもできるし、手を打つ時間にもできます。
■ 朝イチでやらないほうがいいこと
朝の腰がつらい方に、避けていただきたいことを挙げます。
・目覚めてすぐ、勢いをつけてガバッと起き上がる(腰に一番負担のかかる起き方です)
・朝イチの前かがみ作業(洗面・靴下・荷物の持ち上げ)を無防備にやる
・痛む腰を朝から強く揉む・叩く
・「動けば楽になるから」と、痛みの変化を記録せずやり過ごし続ける
起き上がるときは、一度横向きになってから、腕の力を借りて起きる。それだけで朝の腰への負担はかなり違います。
■ 家でできる朝の工夫
・起きる前に、布団の中で膝を軽く抱えて腰を丸める・戻すを数回(急がず、痛みの手前まで)
・洗面台では膝を軽く曲げ、股関節から曲げる意識で前かがみになる
・朝の白湯や朝食で体の中から温める。夏の冷房で腰やお腹を冷やしたまま寝ない
・寝具は「朝の痛みが枕やマットレスを変えた日から明確に変わるか」で判断する(道具より先に、体側の確認をおすすめします)
■ 先に医療機関で確かめてほしいサイン——夜間痛・安静時痛は別枠です
「朝痛くて動くと楽になる」パターンから外れるものは、別枠で考えてください。
・動いても楽にならない、日ごとに強くなる
・夜中、寝ていても痛みで目が覚める(安静時痛・夜間痛)
・発熱・原因不明の体重減少を伴う
・足のしびれ・力の入りにくさを伴う
・転倒などのきっかけの後から痛み出した(とくにご高齢の方)
これらは、内臓や骨の病気が背景にある可能性を先に消しておくべきサインです。整形外科での確認を先にお願いしています。
腰の症状については、こちらの記事もあわせてご覧ください。
ぎっくり腰の他の言い方は?正式名称は「急性腰痛症」|深谷市の接骨院が解説
https://taiyo-fukaya.com/blog/gikkurigoshi-other-names-fukaya/
深谷市で腰痛にお悩みの方へ|深谷たいよう接骨院が伝える「梨状筋」という視点
https://taiyo-fukaya.com/blog/lumbago-piriformis/
■ よくある質問
Q. 朝だけ腰が痛いのは、放っておいて大丈夫ですか。
A. 動くと楽になる朝の痛みには体の仕組みとして自然な面もあります。ただ、当院の実例には、朝だけの痛みがほぼ常時の痛みへ進んだ方がいらっしゃいます。痛みの強さ・続く時間が変わってきていないかを観察して、変化があれば早めにご相談ください。
Q. マットレスを替えれば良くなりますか。
A. 寝具が合っていない場合はあります。ただ、当院の実例では姿勢や関節の側に理由が見つかることが多く、道具を替える前に体側を確かめる順番をおすすめしています。
Q. 朝にストレッチをしてもいいですか。
A. 布団の中で軽く腰を丸める程度は良い準備運動になります。一方、起き抜けに強く反らせたり勢いをつけたりするのは、朝の腰には負担になることがあります。痛みの手前までを守ってください。
Q. 前かがみで痛い場合と反って痛い場合で、何が違うのですか。
A. 大づかみには、前かがみの痛みは筋肉側、反りの痛みは関節や構造の側が関係しやすいと当院では見ています。実際の初診でも、この確認から検査を組み立てています。
Q. 内臓の病気が心配です。
A. 動いても楽にならない・夜間も痛む・発熱や体重減少を伴う場合は、先に医療機関での確認をおすすめします。「朝痛くて動くと楽」のパターンかどうかが、ひとつの目安になります。
Q. 何回くらいで良くなりますか。
A. 状態により大きく異なるため、一律にはお伝えできません。急性の痛みの下に長年の土台が隠れている場合、その土台とどう付き合うかまで含めて、初回に正直な見通しをお伝えします。
■ まとめ:朝の痛みは、体からの最初の連絡です
朝起きると腰が痛いのは、一晩の同じ姿勢と、朝に張っている椎間板という体の仕組みが関係しています。動くと楽になるなら、まだ打つ手が多い段階です。
ただ、当院の実例が示すのは、「朝起きたら急に」の下に積み重ねが隠れていること、そして朝だけの痛みが常時の痛みへ進むことがある、という2つの事実です。
前かがみと反り、どちらで痛むか。痛みは先月より強くなっていないか。その観察を持って、一度体を確かめにいらしてください。朝の痛みは、体からの最初の連絡です。
▼この症状の専門ページ:腰痛について詳しくはこちら|深谷たいよう接骨院
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【著者情報】
田島 陽平(たじま ようへい)/治療家・株式会社キュアクオリティ代表。柔道整復師として20年以上の臨床経験を持つ。整形外科・接骨院勤務を経て独立し、埼玉県深谷市・熊谷市で2院を経営。カイロプラクティック歴15年以上・オステオパシーを組み合わせた独自の施術スタイルで、坐骨神経痛・腰痛・肩こりなど慢性症状でお悩みの方のサポートを行っている。現在は国際基準のフランス式オステオパシーを学んでいる。
【参考文献】
Segmental Quantitative MR Imaging Analysis of Diurnal Variation of Water Content in the Lumbar Intervertebral Discs.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4296262/
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療行為や診断を行うものではありません。症状が重い場合や長期間続く場合は、医療機関へのご相談をお勧めします。


