腰に急な痛みが走った。周りからは「ぎっくり腰だね」と言われた。でも、正式にはなんという名前なのだろう。
そんなふうに調べていらっしゃる方が多いようです。
呼び名は、この記事の前半で整理します。そのうえで、深谷市で20年以上お体を診てきた立場から、もうひとつお伝えしたいことがあります。
それは、ぎっくり腰という言葉は診断名ではない、ということです。名前がついても、原因が分かったわけではありません。
■ ぎっくり腰の他の言い方は?正式名称は「急性腰痛症」
ぎっくり腰の医学的な名称は「急性腰痛症」です。
日本整形外科学会も、急に生じた腰の痛みを指す一般的な言い方として「ぎっくり腰」を紹介しており、正式な用語としては急性腰痛という表現を用いています。
つまり「ぎっくり腰」と「急性腰痛症」は、同じ状態を指す別の呼び方ということになります。
他にも、次のような言い方を耳にされることがあると思います。
| 呼び方 | どういう場面で使われるか | 意味するもの |
| ぎっくり腰 | 日常会話・患者さんご本人の説明 | 急に起きた強い腰の痛み全般 |
| 急性腰痛症 | 医療機関の書類・説明 | ぎっくり腰と同じ状態の医学的な呼称 |
| 魔女の一撃 | 読み物・コラムなど | ヨーロッパでの言い回しを訳したもの |
| 腰椎捻挫 | 接骨院・整形外科の記録 | 腰の関節や靭帯を痛めたという意味合い |
| 腰部挫傷 | 接骨院・整形外科の記録 | 腰の筋肉などを痛めたという意味合い |
呼び方が違うだけで、痛みの重さが違うわけではありません。どの言葉が使われたかで一喜一憂しなくて大丈夫です。
■ 「魔女の一撃」とは?海外での呼ばれ方
ぎっくり腰は、ドイツ語圏で「魔女の一撃」と表現されることがあります。
何の前触れもなく、突然強い痛みに襲われる。その感覚を言い表した言葉です。
当院にいらっしゃる方も「本当に、いきなり撃たれたみたいでした」とおっしゃることがあります。表現としては、とてもよく伝わる言い方だと思います。
ただ、この言葉には少し注意も必要です。
「突然、何もないところから起きるもの」という印象を強めてしまうためです。実際には、その前から腰に負担が積み重なっていて、たまたまその日に限界を超えた、という方がとても多くいらっしゃいます。
■ 実は「ぎっくり腰」は診断名ではありません
ここが、この記事で一番お伝えしたいところです。
ぎっくり腰も、急性腰痛症も、「急に腰が痛くなった状態」を指す言葉であって、なぜ痛くなったのかを説明する言葉ではありません。
たとえば、腰の関節に負担がかかっている場合も、筋肉が強く緊張している場合も、まったく別の原因が隠れている場合も、外から見える形は同じ「急に腰が痛くなった」です。
名前がついた時点で安心してしまうと、この違いが見えなくなります。
当院が問診と検査に時間をかけているのは、この「同じ名前の中にある違い」を分けるためです。
■ ぎっくり腰と、よく似た他の腰の痛みとの違い
ご相談の中で、混同されやすいものを整理しておきます。
「ぎっくり背中」という言い方をされる方もいらっしゃいます。こちらは腰ではなく背中側に急な痛みが出たときに使われる言葉で、指している場所が違います。
慢性腰痛は、痛みが長く続いている状態を指します。ぎっくり腰が急に起きた痛みを指すのに対して、こちらは時間の長さで区別されます。
そして、この2つは重なることがあります。もともと慢性的に腰の重さを抱えていた方が、ある日ぎっくり腰を起こす、というかたちです。当院では、この重なりがある方は経過が長くなりやすいと考えて説明しています。
■ 名前より大事な「見分け」——当院が必ず確かめていること
ここで、実際にあったお話をひとつご紹介します。
深谷市で看板のお仕事をされている60代の男性の方です。看板を持ち上げたときに腰が痛くなり、整形外科を受診されました。レントゲンでは異常がなく、ぎっくり腰という説明を受けたそうです。
2、3日たっても変わらないということで、当院にいらっしゃいました。整形外科での説明がありましたので、当院でも急性の腰痛として対応を始めています。
ところが、通っていただいても、日にちが過ぎても、痛みの出方がまったく同じままでした。
そこで、もう一度はじめから確かめ直しました。
・痛みは激しいものではなく、鈍い痛みがずっと続いている
・動いても、じっとしていても、痛みが変わらない
・お薬も湿布も効いていない
・夜、寝ている間も痛みが続いている
・よく伺うと「以前から腰に違和感があった。持ち上げた瞬間に激痛が走ったわけではない」
通常、腰の関節や筋肉を痛めた場合は、動いたときと安静にしているときで痛みが変わります。この方はそれがありませんでした。
当院では、これらは体の中の別の要因を考えるべきサインだと考えています。そのため、施術を続けるのではなく、もう一度病院で詳しく調べていただくようお伝えしました。
精密検査の結果、大腸の病気が見つかりました。後日、ご本人がわざわざご報告に来てくださり、「あのとき、先生に見てもらって本当によかった」と言っていただきました。
この方は、最初から最後まで「ぎっくり腰」と呼ばれていました。名前は間違っていません。ただ、名前が合っていることと、原因が分かっていることは別だということです。
■ 病院で先に確かめていただきたいサイン
上のお話をふまえて、当院がお伝えしている目安をまとめます。
次のような場合は、施術の前に医療機関で調べていただくことをおすすめしています。
・思い当たるきっかけがない、またははっきりしない
・動いても、じっとしていても痛みが変わらない
・夜、眠っている間も痛む
・お薬や湿布がまったく効かない
・日にちが過ぎても、痛みの出方がまったく同じまま
・足に力が入りにくい、感覚が鈍い、排尿の様子がいつもと違う
これらに当てはまるからといって、必ず大きな病気があるという意味ではありません。ただ、先に確かめておいたほうがよい種類のサインです。
■ ぎっくり腰はどれくらいで良くなるのか
もうひとつ、実際のお話をご紹介します。
介護のお仕事をされている30代の女性の方です。5歳と3歳のお子さんを育てながら働いていらっしゃいます。
はっきりしたきっかけがないまま、右の腰に痛みが出ました。前にかがむのは平気で、後ろに反ると痛む。腰の関節に負担がかかると痛む状態でした。
お体を拝見すると、腰が反っていて、お腹が前に出て、頭が前に出た姿勢になっていました。急な痛みではありましたが、その土台には日頃の姿勢の積み重ねがあると考えました。
この方には、次のようにお伝えしています。
炎症そのものは、数日でいったん落ち着いてくることが多い。痛みも、多くの場合は一週間ほどで和らいでくる。ただし、姿勢の癖のようにもともとの土台がある方は、そこが変わらない限り経過が長くなったり、繰り返したりすることがある。
この見通しは、急性腰痛という症状そのものについて報告されている経過とも方向が一致しています。系統的にまとめた研究では、痛みも日常生活の支障も、はじめのひと月でもっとも大きく動き、その後ゆるやかになり、三か月を過ぎたあたりからはほぼ横ばいになるとされています。
つまり、大半の方は自然に軽くなっていきます。ただ、三か月の時点で残っているものは、そのまま長引きやすいということでもあります。
■ 一度良くなっても、繰り返す方が多い
ここは正直にお伝えしておきたい部分です。
急性の腰痛は、いったん治まっても再び起こる方が多いと報告されています。調査の仕方によって幅はありますが、複数の追跡調査で「1年以内に少なくとも1回は再発した方が7割前後」という数字が報告されています。
当院にいらっしゃる方の中にも、「毎年この時期にやってしまう」「これで3回目です」とおっしゃる方が少なくありません。
痛みが引いた時点が、体が元に戻った時点とは限りません。痛みが出るまでに積み重なっていたものは、痛みが引いても残っていることがあります。
繰り返す背景については、こちらの記事でも詳しくお伝えしています。
繰り返すぎっくり腰、本当の原因とは?|深谷市の接骨院・整体院が伝えたいこと
https://taiyo-fukaya.com/blog/recurring-gikkurigoshi/
■ 当院で拝見してきた方々の共通点
当院の記録をあらためて横に並べてみました。
ぎっくり腰でいらっしゃった方の年代は、20代から60代まで散らばっていました。男性と女性もほぼ半々です。お仕事も、看板屋さん、介護のお仕事、設備のお仕事、小学校の先生、デスクワークの方と、まったくバラバラでした。
「ぎっくり腰は、力仕事をしている中高年の男性がなるもの」という印象をお持ちの方が多いのですが、少なくとも当院で拝見してきた範囲では、そうではありませんでした。
デスクワークの方も、育児中の方も、同じように起こしています。
■ ぎっくり腰のとき、やってはいけないこと
痛みが出た直後にやってしまいがちで、避けていただきたいことを挙げます。
どこまで動くか試すこと。「曲がるかな」「反れるかな」と確かめる動きが、いちばん痛みを強くします。確かめたい気持ちは分かりますが、そこはこらえてください。
強く揉むこと、押すこと。痛みが出て間もない時期は、体の中で反応が起きている最中です。そこへ強い刺激を加えると、反応がさらに強く出ることがあります。
長く湯船につかること、お酒を飲むこと。どちらも、痛みが出た直後の時期には向きません。
そして、ずっと横になったまま過ごすこと。これは意外に思われるかもしれませんが、動かずにいる時間が長いほど回復が遅れることが分かっています。痛みの出ない範囲で、生活の中の動きは続けてください。
最後に、我慢して仕事や家事をいつも通りにこなすこと。動くことと、無理をすることは違います。
■ 深谷市で「ぎっくり腰かも」と思ったときの動き方
急に腰が痛くなったとき、当院がお伝えしている順番です。
まず、無理に動かして確かめようとしないでください。「どこまで曲がるか」を試すことで、かえって痛みが強くなることがあります。
次に、上に挙げたサイン(夜間の痛み、じっとしていても変わらない痛みなど)に当てはまらないかを確認してください。当てはまる場合は、まず医療機関でご相談ください。
そのうえで、動くこと自体は避けなくて大丈夫です。以前は安静にすることがすすめられていましたが、現在は、痛みの範囲内で日常の動きを続けたほうが回復が早いという考え方が定着しています。
ずっと横になっているより、痛みの出ない範囲で少しずつ動いていただくほうが、結果的に早く戻ります。
深谷市で腰の痛みにお悩みの方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
深谷市で腰痛にお悩みの方へ|深谷たいよう接骨院が伝える「梨状筋」という視点
https://taiyo-fukaya.com/blog/lumbago-piriformis/
■ よくある質問
Q. ぎっくり腰の他の言い方を教えてください。
A. 医学的には「急性腰痛症」と呼ばれます。記録によっては腰椎捻挫、腰部挫傷といった表現が使われることもあります。海外では「魔女の一撃」という言い方もあります。
Q. 「急性腰痛症」と言われました。ぎっくり腰とは違うのですか。
A. 同じ状態を指す別の呼び方です。呼び名が違うことで重さが変わるわけではありません。
Q. ぎっくり腰は何日くらいで良くなりますか。
A. 炎症そのものは数日で落ち着いてくることが多く、痛みも一週間ほどで和らぐ方が多いです。ただ、もともとの姿勢や体の使い方に背景がある場合は、そこが変わらない限り長引くことがあります。
Q. 冷やすのと温めるの、どちらがよいですか。
A. 痛みが出て間もない時期は、まず冷やすことをおすすめしています。時期によって変わりますので、迷われたらご相談ください。
Q. 動かないほうがよいですか。
A. 痛みの出ない範囲で日常の動きを続けていただくほうが、回復は早いとされています。ずっと横になっている必要はありません。
Q. 何度も繰り返しています。癖になってしまったのでしょうか。
A. 癖という言葉で片付けず、繰り返す土台があるかどうかを確認することをおすすめします。姿勢や体の使い方が関係していることがあります。
Q. 病院でレントゲンを撮って異常なしと言われましたが、痛みが続いています。
A. レントゲンで写らないものもあります。日にちが過ぎても痛みの出方が同じままの場合は、そのことを医療機関にもお伝えいただくか、一度ご相談ください。
■ まとめ:名前がついても、原因が分かったわけではありません
ぎっくり腰の他の言い方は「急性腰痛症」です。腰椎捻挫、腰部挫傷といった書かれ方をすることもあります。
ただ、これらはすべて「急に腰が痛くなった」という状態を指す言葉であって、なぜそうなったのかを説明する言葉ではありません。
当院が問診と検査に時間をかけているのは、同じ名前の中にある違いを分けるためです。名前が合っていても、その先を確かめないと見えないものがあります。
急な腰の痛みでお困りのときは、まず医療機関で状態を確認していただき、そのうえで気になることがあれば、当院にもお気軽にご相談ください。
深谷市でぎっくり腰・腰の痛みにお悩みの方は、深谷たいよう接骨院・整体院のLINEからお気軽にご相談ください。
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【著者情報】
田島 陽平(たじま ようへい)/治療家・株式会社キュアクオリティ代表。柔道整復師として20年以上の臨床経験を持つ。整形外科・接骨院勤務を経て独立し、埼玉県深谷市・熊谷市で2院を経営。カイロプラクティック歴15年以上・オステオパシーを組み合わせた独自の施術スタイルで、坐骨神経痛・腰痛・肩こりなど慢性症状でお悩みの方のサポートを行っている。現在は国際基準のフランス式オステオパシーを学んでいる。
【参考文献】
Pengel LH, et al. Acute low back pain: systematic review of its prognosis. BMJ. 2003
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC169642/
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療行為や診断を行うものではありません。症状が重い場合や長期間続く場合は、医療機関へのご相談をお勧めします。


