深谷市で猫背を気にされている方から、当院にご相談をいただきます。家族に指摘された、写真に写った自分の姿勢が気になった、きっかけはさまざまです。
そして多くの方が、同じ質問をされます。背中を伸ばせばいいんですよね、と。
先に結論をお伝えします。伸ばして楽になる方はいます。ただ、伸ばして悪くなる方もいます。当院には、良い姿勢だと信じて胸を張り続けてこられた方が、首の痛みで来院された記録が残っています。
ですから当院では、猫背の方に一律で「背中を伸ばしましょう」とはお伝えしません。この記事では、なぜそう考えているのか、そしてご自身がどちら側なのかを見分ける手がかりまでお話しします。
■ 猫背は、背中を伸ばせばいいのでしょうか
猫背という言葉は、背中が丸まっている状態を指す呼び名です。病名ではありません。
そして「丸まっているのだから、伸ばせば元に戻る」というのは、とても自然な発想です。実際、それで楽になる方はいらっしゃいます。
ただ、背中が丸く見える理由は一つではありません。背中そのものが丸いのではなく、頭が前に出た結果として背中が丸く見えている方がいます。骨盤の傾きに合わせて上半身がバランスを取っている方もいます。腰が反りすぎて、その代わりに背中が丸まっている方もいます。
理由が違えば、伸ばしたときに起きることも変わります。ここを確かめずに形だけ変えにいくと、負担のかかる場所が首や腰へ移ることがあります。実際、当院で姿勢を確かめた方の中には、背中の丸さより先に、首の一直線化や腰の反りのほうが強く出ていた方が何人もいらっしゃいます。
■ 良い姿勢のつもりで胸を張り続けて、首を痛めた方がいます
事務のお仕事を長く続けてこられた女性の方です。首の痛みと肘の痛みでご相談にいらっしゃいました。
この方は、職場で長年「姿勢を正すように」と指導を受けてこられました。そしてご本人は、それを忠実に守っていらっしゃいました。胸を張り、背中をまっすぐにする。ご本人にとって、それが良い姿勢でした。
当院で確かめたところ、背骨の胸の部分が、本来あるはずのゆるやかな丸みを失って、逆に反り気味になっていました。背骨は本来、首は前に、胸は後ろに、腰は前にと、ゆるやかなカーブが交互に並んでいます。胸の丸みが減ると、そのしわ寄せは上下に向かいます。この方の場合、首側に負担が集まっていた可能性があります。
あらためて医療機関で検査を受けていただいたところ、首の椎間板の問題があることが分かりました。
そのうえで、姿勢の考え方を一緒に組み直し、施術を続けてきました。今は痛みもしびれも、ほとんど出ない状態で過ごしていらっしゃいます。
この方が特別だったとは考えていません。胸を張る姿勢は、顎が上がって首を反らせる形になりやすいためです。タイのオフィスワーカーの方を一年間追いかけた調査では、首の痛みが慢性化していく要因の一つとして、勤務中に首を反らせる動きが頻繁にあることが挙げられたと報告されています。良い姿勢のつもりで一日中続けている動きが、体にとっては負担になっていることがあるということです。
■ 背中が丸いのに、筋肉が縮んでいるとは限りません
もう一つ、誤解されやすいところをお話しします。
デスクワークで残業の多いお仕事をされている男性の方が、肩こりと首の張りでご相談にいらっしゃいました。頭が前に出て、骨盤が前に傾き、腰が反っている状態でした。
机に向かうお仕事の方に首の症状が多いことは、当院だけの傾向ではありません。ベルギーのオフィスワーカー512名を対象にした2007年の調査では、一年間のうちに首の痛みを経験した方の割合が45.5パーセントと報告されています。
この方の肩こりについて、当院がお伝えしたのは、筋肉が縮んで固まっているのではなく、引き伸ばされたまま固まっているという見方です。
頭は体の中でも重さのある部分です。それが前に出ると、後ろ側の筋肉は綱引きのように引っ張られた状態が続きやすくなります。引っ張られたまま力を出し続けている筋肉は、休むことができません。
この状態のときに、さらにストレッチで伸ばそうとすると、すでに伸びている側をもっと伸ばすことになります。楽にならない、あるいはかえって張りが強くなる、ということが起こり得ます。
「丸まっている=縮んでいる」とは限らない。ここが、伸ばして良くならない方がいる理由の一つだと当院は考えています。
■ 当院が猫背を見るときに、実際に確かめていること
背中の丸さだけを見て判断することはありません。実際に確かめているのは、次のようなところです。
一つ目は、首の並び方です。横から立った姿を見て、耳の位置が肩より前に出ていないかを確かめ、そのうえで首の骨のカーブを一つずつ触って確認します。ご家族に指摘されて来院された男性の方の場合、首の骨が前に傾いて、本来ゆるやかにあるはずのカーブがほとんど消えて一直線に近い状態になっていました。背中が丸い方の首が、必ずしも丸くなっているわけではありません。ここで分かるのは、背中の丸さが首から来ているのか、そうでないのかです。
二つ目は、背骨の左右の傾きです。後ろから立った姿を見て、肩と骨盤の高さの差を確かめ、前屈していただいたときに背中の左右どちらかが盛り上がらないかを見ます。同じ方は、胸のあたりの背骨が左右どちらかへ寄っていました。横から見た丸さだけでは分かりません。ここで分かるのは、丸さの裏にねじれが隠れているかどうかです。
三つ目は、骨盤の傾きと、骨盤と背骨のつなぎ目の動きです。立った状態と座った状態の両方で見ます。座ると背中の形が大きく変わる方は、骨盤側の関与が大きいと考えます。この方は、骨盤と背骨のつなぎ目にあたる部分に痛みが出ていました。背中の話をしにいらしたのに、実際に痛んでいたのは腰の下のほうでした。
四つ目は、体全体のカーブのつり合いです。首・胸・腰の三つのカーブを横から順に確かめて、どれが強すぎてどれが足りないかを組み合わせで見ます。膝の痛みでいらした別の女性の方では、首の反りが強く、胸の丸みも強く、腰の反りも強いという形になっていました。どれか一つが崩れると、残りがそれに合わせて形を変えていきます。だから背中だけを見ても、原因の場所は分かりません。
これらを確かめることで分かるのは、「どこが原因で、どこがその結果か」という順番です。順番が分かって初めて、伸ばしたほうがよいのか、そうではないのかを判断できます。
■ 伸ばして楽になりやすい方と、悪くなりやすい方の違い
ご自身がどちら側に近いか、ある程度は目安をつけられます。以下は、当院が実際に見ている観点を整理したものです。あくまで手がかりであって、これで確定するものではありません。
| 確かめること | 伸ばして楽になりやすい | 伸ばすと悪くなりやすい |
|---|---|---|
| 胸を張ったとき | 背中が軽くなる感じがする | 首の後ろや肩の付け根が詰まる感じがする |
| 顎の位置 | 胸を張っても顎の高さが変わらない | 胸を張ると顎が上がってしまう |
| 今つらい場所 | 背中の真ん中あたり | 首の後ろ・肩の付け根・後頭部 |
| 腰の反り | 反りは強くない | もともと腰が反っている自覚がある |
| ストレッチのあと | 数時間は楽な状態が続く | その場は気持ちいいがすぐ戻る、または張りが増す |
右側に当てはまるものが多い方は、伸ばす前に確かめたほうがよい状態かもしれません。首の並びと頭の重さの関係については、別の記事で詳しくお話ししています。
▼この症状の専門ページ:背中の痛み・背部痛について詳しくはこちら|深谷たいよう接骨院
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■ 姿勢の崩れが見つかる方の9割は、姿勢を治しに来ていません
当院の記録を全部見直して、あらためて分かったことがあります。
姿勢の崩れが所見として書かれている方のうち、およそ9割は、姿勢を治したくて来院されたわけではありませんでした。腰が痛い、肩がこる、しびれる。そういう理由でいらして、体を確かめた結果として姿勢の崩れが見つかっています。
これは当院の記録の中での割合であって、世の中全体の数字ではありません。ただ、日々診ている実感とは一致しています。
当院で見ている限りでは、猫背は入り口ではなく結果であることがほとんどです。何かをかばった結果として、あるいは長年の使い方の積み重ねとして、その形になっています。だとすれば、形だけを先に変えにいくのは順番が逆になります。
■ 「正す」ではなく「自然なカーブに戻す」
当院が姿勢についてお伝えするとき、言葉を一つだけ入れ替えていただくようお願いしています。
「姿勢は正すものではなく、自然なカーブを保つものだと考えています」
正すという言葉には、まっすぐにする、という響きがあります。ですが背骨は、もともとまっすぐではありません。首・胸・腰とゆるやかに向きを変えながら、上から降りてくる重さを分散させています。まっすぐに近づけるほど、その分散の仕組みが働きにくくなると考えられています。
先ほどの女性の方に起きていたのは、まさにこれでした。まじめに正そうとした結果、カーブが減ってしまっていたのです。
■ ご自宅でできること——伸ばす前に、座り方から
背中を伸ばす前に、座り方から見直していただくことをおすすめしています。座っている時間は、多くの方にとって一日のうちで最も長い姿勢だからです。
一つ目は、坐骨で座ることです。お尻の下のほうにある、椅子に当たる硬い骨です。そこに体重が乗る位置を探してください。
二つ目は、骨盤を立てることです。坐骨に乗ると、自然と骨盤が起きてきます。腰を反らせるのではありません。
三つ目は、お腹で支えることです。背中の筋肉で胸を張るのではなく、お腹側で体を支える感覚です。これができていると、胸を張らなくても背中が自然に起きてくる方が多いです。
四つ目は、時間を区切ることです。どんなに良い姿勢でも、同じ形で固まれば負担になります。一時間に一度は立ち上がってください。
そして、肩や背中を伸ばすストレッチをされる場合は、伸ばしたあとの数時間の状態を覚えておいてください。その場だけ気持ちよくてすぐ戻る場合、伸ばす場所が合っていない可能性があります。
なお、当院では胸や背中を反らすストレッチをご紹介している記事もあります。ただ、その動きで顎が上がって首の後ろが詰まる感じが出る場合は、そこで止めてください。合う方には合いますが、全員に当てはまるものではありません。
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■ こんなときは医療機関を先に受診してください
姿勢の話の前に、確かめていただきたいことがあります。次のような状態のときは、当院ではなく先に医療機関へご相談ください。
手や足にしびれが続いている場合。力が入りにくい、ものを落とすことが増えた場合。じっとしていても痛む、夜中に痛みで目が覚める場合。短い期間で急に背中の丸まりが強くなった場合。転んだあとや、ぶつけたあとから形が変わった場合。
これらは、姿勢の癖とは別のことが背景にある可能性があります。当院で確かめてから医療機関をご案内することもできますが、ご不安が強いときは先に受診していただいて構いません。
■ 何をどこまで変えられるのか、正直にお伝えします
最後に、限界の話をします。
体の変化には、戻せるものと戻せないものがあります。骨の形そのものが年月をかけて変わってしまったものは、施術で元の形に戻すことはできません。一方で、筋肉のこわばりや関節の動きにくさによって、本来の形が出せなくなっているものは、変えられる余地があります。
多くの方は、その両方をお持ちです。ですから当院がお約束できるのは、「猫背をなくす」ことではありません。今の体で、どこに無理がかかっているかを見つけて、その負担を減らしていくことです。
長く通っていただいている方に、当院がそのままお伝えしている言葉があります。
「歪みを整えたからといって、あらゆる負荷に必ず勝てるわけではありません。無理をすればどうしても痛みは出てしまいます」
「それ以上に強い刺激が入り続ければ痛みが出るというのは、どなたにも共通して言えることだと思います」
見た目が変わることを期待していらした方には、正直に申し上げます。写真で分かるほど形が変わる方もいれば、形はさほど変わらないまま、肩や首のつらさだけが軽くなる方もいます。どちらになるかは、確かめてみないと分かりません。
そして、施術だけで完結することもありません。一日のうち施術を受けている時間より、座っている時間のほうが圧倒的に長いからです。その長い時間のほうを変えていただかないと、体は元に戻ろうとします。
■ よくある質問
Q1. 猫背矯正のベルトやグッズはどうですか
A. 使ってみて楽になる方はいらっしゃいます。ただ、ベルトは形を外から支えるものであって、支えている間だけ形が保たれます。外したときに自分で保てるかどうかは別の話です。また、首が前に出ているタイプの方が胸を強く開くベルトを使うと、首側の負担が増えることがあります。ご自身がどのタイプかを確かめてから選ばれることをおすすめします。
Q2. 何歳からでも変えられますか
A. 年齢だけで決まるものではありません。長く続けてきた姿勢ほど体が慣れるまでに時間はかかりますが、六十代以降の方でもつらさが軽くなった記録があります。何を変えられて何を変えられないかについては、この記事の「何をどこまで変えられるのか」でお話ししたとおりです。
Q3. 筋トレをすれば猫背は良くなりますか
A. 背中の筋肉を鍛えれば伸びる、と考えられている方が多いのですが、必ずしもそうとは限りません。すでに引き伸ばされたまま固まっている筋肉をさらに使うと、負担が増えることがあります。どこが弱っていてどこが働きすぎているかを確かめてから、鍛える場所を決めていただくほうが遠回りになりません。
Q4. 猫背を放っておくと、将来どうなりますか
A. 猫背そのものが必ず何かの病気につながる、というお話ではありません。ただ、体のどこかに負担が集まっている状態が続けば、その場所に症状が出やすくなります。当院にいらっしゃる方でも、首・肩・腰・膝と、負担の集まっている場所は方によって違います。どこに集まっているかを知っておくことには意味があります。
Q5. どのくらいで変わりますか
A. 期間はお約束できません。ただ、目安としてお伝えしているのは、体が新しい状態に慣れ始めるまでに数週間、それが日常の中で定着するまでにはさらに時間がかかる、ということです。長く続けてきた姿勢ほど、戻ろうとする力も強くなります。
Q6. 整形外科と接骨院、どちらに行けばいいですか
A. しびれ・力が入らない・夜間の痛みなど、先ほど挙げた症状がある場合は医療機関を優先してください。そうした症状がなく、姿勢や体の使い方から来る負担を見直したいということであれば、当院でご相談いただけます。どちらか一方ということではなく、必要に応じて医療機関の受診をおすすめすることもあります。
■ まとめ:形を作りにいかないでください
猫背は、背中を伸ばせば元に戻るというものではありません。伸ばして楽になる方もいれば、伸ばして首を痛める方もいます。
大事なのは、なぜその形になっているのかという順番です。頭が前に出た結果なのか、腰の反りに合わせた結果なのか、それとも何かをかばった結果なのか。そこが分かって初めて、伸ばすべきかどうかが決まります。
当院の記録では、姿勢の崩れが見つかる方のほとんどが、姿勢ではなく痛みでいらっしゃいます。猫背は入り口ではなく、結果として表れているものです。
ご自身の背中が今どうなっているのか、まずは確かめるところから始めてください。
深谷市で猫背や姿勢のことでお悩みの方は、深谷たいよう接骨院・整体院のLINEからお気軽にご相談ください。
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【著者情報】
田島 陽平(たじま ようへい)/治療家・株式会社キュアクオリティ代表。柔道整復師として20年以上の臨床経験を持つ。整形外科・接骨院勤務を経て独立し、埼玉県深谷市・熊谷市で2院を経営。カイロプラクティック歴15年以上・オステオパシーを組み合わせた独自の施術スタイルで、坐骨神経痛・腰痛・肩こりなど慢性症状でお悩みの方のサポートを行っている。現在は国際基準のフランス式オステオパシーを学んでいる。
【参考文献】
Sihawong R, et al. Predictors for chronic neck and low back pain in office workers: a 1-year prospective cohort study. J Occup Health. 2016.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26498979/
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療行為や診断を行うものではありません。症状が重い場合や長期間続く場合は、医療機関へのご相談をお勧めします。


