田島 陽平(たじま ようへい)/柔道整復師歴20年以上 /
カイロプラクティック・オステオパシー/株式会社キュアクオリティ代表|深谷・熊谷 たいよう接骨院
はじめに──整形外科で診断されても、なぜ変わらないのか
太ももの内側がしびれる。膝が痛い。仕事も家事もままならない。整形外科でMRIを撮ったら椎間板ヘルニアが見つかり、「ヘルニアによる坐骨神経痛です」と診断された。牽引・痛み止めを続けているが、いつまで経っても変わらない。
こういった経緯で、深谷たいよう接骨院・整体院へ来院される方が一定数いらっしゃいます。
「坐骨神経痛」という言葉は広く知られています。しかし実際には、太ももに出るしびれや膝の痛みが必ずしも坐骨神経の問題とは限りません。坐骨神経ではなく「大腿神経」に問題があるケースが、当院の検査で見つかることがあります。
本記事では、実際に来院された60代の男性の症例をもとに、坐骨神経と大腿神経の解剖学的な違い、当院の機能的検査のアプローチ、そしてカイロプラクティックによる施術の詳細をお伝えします。
「どこへ行っても変わらない」「なぜこの症状が続くのかわからない」という方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。
坐骨神経痛とは何か──症状名であって診断名ではない
「坐骨神経痛」という言葉を耳にすると、一つの病名のように感じる方も多いかと思います。しかし「坐骨神経痛」は病名・診断名ではなく、症状の名前です。
坐骨神経が何らかの原因によって刺激・圧迫されたときに生じる、痛みやしびれの症状全体を指します。原因が別に存在し、その結果として坐骨神経が刺激されることで「坐骨神経痛」という症状が現れます。
坐骨神経の走行と症状の特徴
坐骨神経は、腰椎4番から仙骨3番にかけて出た神経が束になったもので、人体で最も太い神経です。骨盤の後ろ側(梨状筋・坐骨切痕付近)を通り、大腿後面(太もも後ろ)→膝の裏→ふくらはぎ→足先へと走ります。
坐骨神経痛の症状は、この走行に沿って出ます。具体的には以下のような症状です。
- 太もも後面〜ふくらはぎのしびれ・灼熱感
- 足先(親指・小指方向)へ広がるしびれ
- 腰から足にかけての電気が走るような痛み
- 長時間の座位・立位で悪化する
坐骨神経痛の主な原因疾患
坐骨神経痛を引き起こす原因疾患には、以下のものがあります。
│ 原因疾患 │ 特徴 │
│ 腰椎椎間板ヘルニア(最多) │ 椎間板が飛び出し神経根を圧迫 │
│ 脊柱管狭窄症 │ 脊柱管が狭くなり神経が圧迫される │
│ 腰椎すべり症 │ 椎骨がずれて神経への負担が増す │
│ 梨状筋症候群 │ 梨状筋が坐骨神経を締め付ける │
重要なのは、「坐骨神経痛」と言われても、その原因が何かを特定することが治療・施術の鍵になるということです。
大腿神経とは──坐骨神経との決定的な違い
坐骨神経とよく混同されるのが「大腿神経」です。症状が似ていても、原因となる神経が違えば、アプローチすべき場所も根本から変わります。
大腿神経の走行と症状の特徴
大腿神経は、腰椎2番〜腰椎4番から出て、大腰筋(腸腰筋)の筋間を通り、鼠径部(足の付け根)を経由して大腿前面・内側へと走ります。
大腿神経が刺激されると、以下のような症状が出ます。
- 太もも前面〜内側のしびれ
- 膝の内側の痛み
- 太ももを持ち上げる力が入りにくい感覚
- 鼠径部から膝にかけての違和感
坐骨神経 vs 大腿神経──症状の出る場所の比較
│ 神経 │ 主な症状の出る場所 │
│ 坐骨神経 │ 太もも後面・ふくらはぎ・足先 │
│ 大腿神経 │ 太もも前面・内側・膝の内側 │
「太ももの内側がしびれる」「膝の内側が痛い」という症状は、坐骨神経の走行エリアではありません。大腿神経の領域です。
ここが非常に重要なポイントです。症状の出る場所が違えば、原因となる神経が違う。そして対処すべき場所も、施術の方針も変わります。
大腰筋と大腿神経──絞扼のメカニズム
大腿神経が問題を起こす原因の一つとして、当院の診療でよく見つかるのが「大腰筋(腸腰筋)による大腿神経の絞扼」です。
大腰筋とはどんな筋肉か
大腰筋は、腰椎から大腿骨の内側(小転子)に付着する深層の筋肉です。腸骨筋と合わせて「腸腰筋」とも呼ばれます。立位・歩行・股関節の屈曲に関わる重要な筋肉です。
この筋肉の特徴は、大腿神経がこの筋肉の「間を通って」下に走ることです。大腰筋が慢性的に緊張・短縮すると、大腿神経が通るスペースが狭くなり、神経が締め付けられます。これが「大腰筋による大腿神経の絞扼」です。
なぜ大腰筋が緊張するのか
大腰筋の緊張は、多くの場合、以下のような要因が重なって起こります。
- 骨盤の傾き・歪み(前傾・後傾・左右の高さの違い)
- 腰椎の機能障害(関節の動きが悪い状態)
- 長時間の前かがみ・重労働による慢性的な負荷
- 過去の外傷(骨折・事故など)による身体のアンバランス
「坐骨神経痛」ではないにもかかわらず、腰周りの施術や牽引で改善しない原因の一つが、この大腰筋の問題にあることがあります。
実際の症例──整形外科診断との乖離、当院での検査
症例の概要
- 患者:60代・男性・精米店勤務・深谷市在住
- 主訴:左太もも内側のしびれ(メイン)・左膝の痛み
- 痛みの強さ:10段階で8(常に痛い・立っていても歩いていても寝ていても)
- 生活への影響:仕事・家事ができない / 旅行(3月予定)に行けるか不安
- 整形外科での診断:椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛(MRI:L4-5・L5-S1の椎間板狭窄確認)
- 他院での対処:牽引・痛み止め(改善なし)
- 既往歴:10年前のヘルニア診断 / バイク事故による肋骨・鎖骨骨折
問診の段階で引っかかったのは「太ももの内側のしびれ」という症状でした。坐骨神経の走行は太もも後面〜ふくらはぎ。「内側」は坐骨神経のルートとは一致しません。
当院での機能的検査の流れ
深谷たいよう接骨院・整体院では、問診のあとに全体的な身体の考察と機能的検査を行います。部位から入らず、全体から読む。それが当院の検査の考え方です。
ステップ1:ヘルニアによる神経圧迫の確認検査
ヘルニアが神経根を直接圧迫しているかどうかを確認する検査を行いました。
→ 結果:陰性(神経圧迫のサインなし)
ステップ2:腸腰筋(大腰筋)の機能検査
腸腰筋の緊張・機能不全を確認する検査を行いました。
→ 結果:陽性(問題のあるサインが出た)
ステップ3:症状の分布の確認
しびれ・痛みの出ている場所を改めて詳細に確認しました。
→ 結果:太もも前面〜内側・膝の内側。大腿神経の走行と一致。
判断:大腰筋による大腿神経の絞扼
これら3つの検査結果と症状の分布を総合して、原因は「大腰筋(腸腰筋)による大腿神経の絞扼」と判断しました。
整形外科での診断「椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛」に対して、当院の検査では「ヘルニアによる神経圧迫のサイン:陰性」という結果が出ました。画像にヘルニアが写っていても、それが現在の症状の直接原因とは限りません。
精米店での重労働と、バイク事故の既往歴が積み重なって骨盤・腰椎に歪みが生じ、大腰筋の慢性的な緊張につながっていたと考えられます。
なぜ「痛い場所だけ」へのアプローチでは根本から変わりにくいのか
腰が痛い・太ももがしびれる・膝が痛い。こういった症状に対して、症状の出ている部位だけを触っていては、根本からの変化が難しいことがあります。
当院では「痛い場所が原因ではない」という考え方を施術の根本においています。
腰椎・頸椎は他の部位の機能障害を代償して動いている結果として痛くなりやすい場所です。骨盤が傾けば腰椎への負担が増します。胸椎の動きが制限されれば、腰椎が代わりに動きすぎます。そして上部頸椎の歪みは、神経系全体に影響を与えやすい部位です。
大腰筋も同様です。「大腰筋をほぐす」だけでは、根本を変えたことにはなりません。大腰筋が緊張している根本には、骨盤の傾きや腰椎の機能障害があります。そこを整えることで、大腰筋の緊張が本質的に緩んでくる。その連鎖を作ることが、施術の目指すところです。
当院では骨盤・腰椎・胸椎・頸椎まで含めた全体のバランスを整えていきます。一見「腰の症状」でも、胸椎や頸椎まで含めた全体を見て、機能障害の連鎖を読んでから施術に入ります。
カイロプラクティック・オステオパシーによるアプローチ
施術の核心──関節の機能障害を整える
カイロプラクティックでは、関節の機能障害(サブラクセーション)によって神経の働きが乱れ、身体の自然治癒力がサポートされにくくなるという考え方をベースにしています。
関節の機能障害(サブラクセーション)→ 神経が正常に働きやすい状態 → 自然治癒力がサポートされる
この流れを目指して施術を行います。
アクティベーター矯正について
深谷たいよう接骨院・整体院では、アクティベーターという器具のみを使った矯正を行っています。スプリング式の器具で、問題のある関節に低振幅・高速の刺激を入れる施術法です。
アクティベーター矯正の特徴
・音が出ない(バキバキ・ボキボキしない)
・怖くない・強い力を使わない
・問題のある関節にピンポイントでアプローチ
・低刺激で安全性が高い施術法とされている
アクティベーターは、関節の固有受容器(センサー)に働きかけることで、神経系が正常に働きやすい状態を整えるとされています。筋肉を緩める・骨を「はめる」という概念ではなく、関節の機能を回復させて神経の働きをサポートするという考え方です。
カイロプラクティックが怖い・音が鳴るのが嫌だという方にも、安心して受けていただける施術です。
オステオパシーとの組み合わせ
必要に応じて、オステオパシーのアプローチも行います。
│ アプローチ │ 特徴 │
│ カイロプラクティック(アクティベーター) │ 骨盤・脊椎・神経系へのメインの矯正 │
│ オステオパシー │ 内臓・頭蓋仙骨・筋筋膜への補完アプローチ │
大腰筋の緊張が内臓や筋膜と関連している場合には、オステオパシーのアプローチを加えることで、より深い変化につながることがあります。
深谷たいよう接骨院・整体院の施術フロー
ステップ1:問診・カウンセリング
症状の経緯・生活習慣・既往歴・他院での治療経緯を詳しく聞きます。「どんな動きで悪化するか」「いつ・どこで・どんな痛みか」を丁寧に整理します。
ステップ2:全体的な身体の考察
全身を一つのつながりとして見て、機能障害の連鎖を読みます。例えば、肋骨の機能障害→交感神経→横隔膜の緊張→大腰筋→骨盤・腰椎という連鎖を読む。部位から入らず、全体から読む視点が当院の施術の根本です。
ステップ3:機能的検査
考察に基づいて、疑わしい部位を機能的検査で確認します。Gonstead・Thompson・SOT・Activatorを組み合わせて問題部位を特定します。
ステップ4:アクティベーター矯正
骨盤・腰椎・胸椎・頸椎の問題のある関節にアクティベーターでアプローチします。
ステップ5:必要に応じてオステオパシー
内臓・頭蓋仙骨・筋筋膜にアプローチが必要な場合に追加します。
ステップ6:再検査
施術前後の変化を検査で確認します。「どう変わったか」を数値・検査で共有します。
今回の症例では、骨盤・腰椎・胸椎・頸椎の歪みを整えることで、大腰筋の緊張が緩み、大腿神経への圧迫が軽減されていきました。
症状の経過と日常の回復
この方の経過は以下のとおりです。
- 初回来院時:しびれ・痛みが10段階で8。仕事・家事・睡眠もままならない
- 4回の施術:しびれが4割ほど軽減
- その後継続:しびれも痛みもほぼ感じなくなる
- 現在:精米店の仕事に復帰。2週間に1回のメンテナンスで来院継続中
来院されたとき、「3月に旅行を入れていたが、今の状態では無理だと思う」とおっしゃっていました。3月の旅行には間に合いませんでしたが、今は「家族旅行を楽しみにしてる」と話してくれています。
症状が和らぐのは目標の一つですが、当院が目指しているのはその先にある「日常の回復」です。仕事に戻れること。家族と旅行に行けること。それが施術の本当のゴールだと考えています。
よくあるご質問
Q1. 整形外科でヘルニアと診断されましたが、当院で対応できますか?
はい、対応しています。当院の検査でヘルニアが現在の症状の直接原因かどうかを確認し、施術の方針を決めます。整形外科の診断と当院の機能的検査を組み合わせることで、より精度の高いアプローチが可能になります。
Q2. 長年しびれが続いています。変化が出ますか?
しびれの期間・原因・程度によって個人差はありますが、長期間続いているからといって改善の可能性がゼロではありません。まずは検査で原因を確認することが大切です。ご状態によっては、医療機関との連携をご提案することもあります。
Q3. アクティベーター矯正は怖くないですか?
怖いと感じる方はほとんどいらっしゃいません。音が出ない・強い力を使わない施術です。一般的なカイロプラクティックのイメージ(ボキボキ・バキバキ)とは異なります。
Q4. 何回くらいで変化が出ますか?
症状の種類・原因・期間によって個人差があります。今回の症例の方のように4回で4割軽減した方もいれば、もう少し時間がかかる方もいます。まず数回を目安にご来院いただき、変化を一緒に確認しながら進めていきます。
Q5. 重労働をしています。施術は受けられますか?
はい、受けていただけます。強い力を使わない施術ですので、体への負担も少ないです。重労働による慢性的な身体の歪みは、当院の得意とするアプローチです。
まとめ
「ヘルニアによる坐骨神経痛」と診断されていても、太もも内側のしびれや膝の痛みという症状が続く場合、原因が大腿神経にある可能性があります。坐骨神経と大腿神経は走行が異なり、症状の出る場所が違います。機能的検査でその違いを確認することが、施術方針の出発点になります。
深谷市で太もものしびれ・膝の痛み・神経痛でお悩みの方は、ぜひ深谷たいよう接骨院・整体院へご相談ください。問診と検査で症状の根本にアプローチし、日常生活の回復を一緒に目指します。
著者情報
田島 陽平(たじま ようへい)
治療家・株式会社キュアクオリティ代表。柔道整復師として20年以上の臨床経験を持つ。整形外科・接骨院勤務を経て独立し、埼玉県深谷市・熊谷市で2院を経営。カイロプラクティック歴15年以上・オステオパシーを組み合わせた独自の施術スタイルで、坐骨神経痛・腰痛・肩こりなど慢性症状でお悩みの方のサポートを行っている。
深谷たいよう接骨院・整体院
https://taiyo-fukaya.com/
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療行為や診断を行うものではありません。症状が重い場合や長期間続く場合は、医療機関へのご相談をお勧めします。


